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『わかな十五歳』の装画制作裏話

『わかな十五歳』のカバー装画を描いた、イラストレーターの三井ヤスシによる寄稿です。


「この原稿で本を作りたいんだけど」

と、手渡された数枚の書類。

原発事故後に福島県から北海道に移住してきた女性の手記で、私が知らない311当日の福島県の様子が書かれていました。

この数枚の書類から、編集担当が著者のわかなさんとやり取りをして、少しずつ形になっていく原稿に、次第に私の心も熱くなってきました。

装画を描く段階になり、どういった場面を描くかを編集担当と話し合った結果、わかなさんが生まれ故郷を離れるシーンを描くことに決まりました。

わかなさんは、目の前に広がる美しい桜の景色と、今この瞬間に起こっている原発事故のむごさの「ちぐはぐ感」について言及されていますが、そのイメージを描きたいと思いました。

桜並木のトンネルに佇む少女は、そのトンネルの先を見つめています。長く暗いトンネルの中でもがき続けたわかなさんは、苦しみの闇の中で生きる希望を手にします。

景色としては美しい桜並木のトンネルですが、現実としてはあまりにちくはぐで、絶望してしまう暗闇のトンネルだったかもしれません。

でも、そんなトンネルの中の少女は、その先にある光の射す「希望」という出口に目を向けています。裏表紙には25歳になった少女の後ろ姿を描きました。

桜並木のトンネルは反転させて、15歳だった少女と25歳になった少女を、長い桜並木のトンネルで向き合わせたイメージで描き、この本の「はじめに」で、25歳になったわかなさんが15歳だったわかなさんに言葉をかける場面を重ねました。

この本は原発事故をテーマにしていますが、原発事故によってあらわになった日本社会の姿を、こどもたちの瞳にどう映ったのかが描かれています。

我々が追い求めてきた幸せとは一体何だったのでしょうか? 我々にとって本当に大切なものとは何でしょうか?

日本社会の「当たり前」によって大人たちには見えなくなってしまった大切なものを、こどもたちの真っ直ぐな瞳は捉えています。

少女の後ろ姿が、あなたに静かに問い掛けます。

あなたはその問い掛けに対して、どのように答えますか?

三井ヤスシ MITSUI YASUSHI
1976年山梨県生まれ。現在、北海道旭川市在住。画家・イラストレーター。
MITSUI CREATIVE:https://mitsui-creative.com/profile/

▼「わかな十五歳 中学生の瞳に映った3・11」特設ページはこちら

わかな十五歳 中学生の瞳に映った3・11 特設ページ

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