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ノーマ・フィールドさんの『わかな十五歳』書評

「みすず」2022年1・2月合併号(読書アンケート特集号)で、ノーマ・フィールドさん(シカゴ大学名誉教授)に『わかな十五歳』をご紹介いただきました。(以下全文)

今年読んだどの書よりもこころに残った作品。中学生として3・11に遭遇した著者は福島から山形への避難・天候の体験を、独り立ちして北海道に永住して確保できた視点から振り返る。原発事故(核災害)が老若男女を震撼させたことは言うまでもない。大人が大人として子どもを守り、いたわることがなんとも困難な状況だった。ここでは、教員の対応にとくに落胆する。個人を責めるより、なぜ日本社会がこういう教員層をつくり出したのかを考えさせられる。教育「改革」とそれが凝縮した価値観の集大成なのだろうか。当然、原発事故や福島に限る問題ではない。大小の危機に際して、保護者も教育者も子どもを慈しむ大人として振る舞える社会こそ常時幸せな社会ではないだろうか。「最愛のあなたと私に贈る」と「まえがき」を締めくくるわかなさんの現在を想像して、ホッとし、将来に期待を寄せる。

(「みすず」2022年1・2月合併号より)

お一人3冊、「新刊旧刊を問わず昨年出会った印象的な本」(みすず書房HPより)を紹介する毎年恒例企画なのですが、2021年度ピューリッツァー賞小説部門受賞作の’The Night Watchman’, 著名なアメリカ黒人史の研究書’The American Struggle for Civil Rights’ と並べてのご紹介にびっくり仰天しております。

小さな声にスポットを当ててくださったノーマ・フィールドさん、ありがとうございました。

 

3月9日にわかなさんのトークイベントが開催されます。詳細はこちら。
https://bookandbeer.com/event/220309/

わかな十五歳 中学生の瞳に映った3・11

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