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6.62021
話題にしなけりゃ始まらない〜ソフィア・ヤンベリさんと語るスウェーデンのLGBT+
スウェーデン社会研究所(JISS)の5月の研究講座で、『ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+』著者、ソフィア・ヤンベリさんがお話されました。
当日のもようを、ちょっぴりですがご紹介します。
ソフィアさんはスウェーデンのストックホルム生まれ&育ち。
10代のころから日本のカルチャーに興味をもち、日本に留学、勤務経験もありました。
本にも書かれているように、ソフィアさんのようなストックホルム(スウェーデンの首都で人口100万人)育ちの若者にとって、LGBT+であることは「ほとんど普通」。
でも日本滞在中は、LGBT+というアイデンティティがばれたら、差別されるかも、と思っていたそうです。
だけど。
LGBT+のことが話題にならなければ、「LGBT+に会ったことがない」とか「LGBT+ってどんな人?」と思っている一般の人には、伝わらない → それだと、何も変わらない。
この悪循環を続けたくないと思って、日本でも、自分のアイデンティティとセクシュアリティを話すようになったそうです。
ソフィアさんによれば、日本人は一般的に、理解があってやさしい、とのこと。
ただ・・・この日紹介されていた、世界150カ国の調査で日本は72位。
その理由は?
「差別」「迫害」などネガティブな項目はほとんどゼロ(「国民の偏見」のグラフが少し高い)。
同時に、ポジティブな「市民権」の項目も、ゼロ。同性婚もできないし、何より差別禁止法がない。つまり、日本はLGBT+を差別も迫害も(ほぼ)していないけど、積極的に守ろうともしていない。
それが、日本のランキングが低い理由、とのことでした。
(ちなみに同じランキングでスウェーデンは3位)
とは言えスウェーデンは、ヨーロッパの中では近年ランキングを落としていることも、ソフィアさんは問題視しています。それについてはアムネスティのLGBTIユースカフェのリポートを参照してみてください。
後半は、JISS所長で明治大学国際日本学部教授の鈴木賢志さんの学生さんや、参加者とのQ&Aでした。
とくに印象に残ったのは、「スウェーデンでも、世代によって理解度の差はありますか?」という質問に答えたエピソード。
ソフィアさんの幼なじみがカミングアウトしたとき、ソフィアさんのお祖父さんは「ああそうなんだ」という感じだったけれど、お祖母さんは「理解できない!」という反応で、ソフィアさん的には「あんなにやさしいおばあちゃんが・・」と思った、という話。
世界でも画期的なLGBT+専用の高齢者住宅がスウェーデンにはあるのですが、そこにお住まいの方々の中には、入居するまで自分のアイデンティティを誰にも話したことがなかったという方も少なくない。この住宅で初めて同じコミュニティの人に出会えて、本当にリラックスして日々過ごしているそうです。
スウェーデンでも、つい数十年前までは、そんな状況だったわけですね。
もう一つ、印象に残ったやりとりは「スウェーデンで自己表現や個人の権利が重要とされているのは、学校とかで教えられたからなのか、歴史的な積み重ねなどで自然にそうなるのでしょうか」という質問への回答。
ソフィアさん:スウェーデン人は昔から個人主義ですがが何よりも、教育だと思います。スウェーデンの学校ではディベートが多く、読んだことや見たことをそのまま受け入れるより、自分でアナライズしたり、自分の意見を言うことが大事とされています。義務教育からそういう教え方に慣れています。
・・・・とのこと。
この点に関しては、日本でも少〜しずつですが、変わってきているのでは、ないでしょうか。
スウェーデンの教育について、もっと知りたい方は
スウェーデンの学校に重要な6つのこと〜ソフィア・ヤンベリさんのお話から〜
さらにご関心おありの方は、JISSの鈴木先生も共著者である『みんなの教育 スウェーデンの「人を育てる」国家戦略』もチェックください。
▼『プライド・パレード』特設ページ
『ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+』ソフィア・ヤンベリ(著)轡田 いずみ (訳)【特設ページ】
▼本のためしよみはこちらから