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「悪くなるには、原因が必ずあるのです」 少年刑務所と『福音ソフトボール』

『空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―』(寮美千子編、新潮文庫)を読んだのは、薬物依存症者の回復施設・山梨ダルクの人々を描いたノンフィクション『福音ソフトボール』(三井ヤスシ著)を編集、出版した後でした。
詩の作者である少年たちと、ダルクで回復の道を歩もうとする方々(=元少年)が、どうしても重なって仕方がありませんでした。

 「自業自得」

 佐々木さんが協力を願い出た先で、たびたび言われた言葉。メディアなどでも、薬物依存症者とくれば、「自業自得」と「自己責任論」が巻き起こる。法を破り、世間様を騒がせたかもしれない。だが、違法薬物に手を出した彼らが悪い、と断罪するのは容易であるが、日々報道されるニュースでは、なぜその人が罪を犯すまでに至ったのか、その経緯までは報道されない。

 山梨ダルクに辿り着いた彼らの背景を聞くと、心が痛むことが多い。

 両親との死別。

 幼い頃からの虐待。

 過保護や過干渉。

 育児放棄やいびつな愛情。

 彼らの生い立ちを聞けば、幼い頃から「心の飢え」を抱えて生きてきたことがわかる。薬物に手を出し、つまずいた彼らを、単に「弱さ」で片づけてよいのだろうか?

 「悪くなるには、原因が必ずあるのです」

 佐々木さんは力を込めて言う。(『福音ソフトボール 山梨ダルクの回復記』より)

ツイートでふれた北海道新聞の巻頭コラムは、改正児童虐待防止法の成立をうけて選ばれたテーマだったようです。法改正だけではもちろん不十分で、この共感の気持ちを忘れずに、より多くの人が持ち続けることが、大切ですよね。(編集N)

『福音ソフトボール』については映画監督・作家の森達也さんの書評も!

【書評】『福音ソフトボール 山梨ダルクの回復記』評者:森達也(ドキュメンタリー映画監督、作家)

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