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9.142021
優生思想に抗するとは、問題解決の路を選ばないこと〜安積遊歩さんからのメッセージ
優生思想とは、優生学的な思想のこと。
優生学とは、広辞苑では
人類の遺伝的素質を改善することを目的とし,悪質の遺伝的形質を淘汰し,優良なものを保存することを研究する学問。1883年イギリスの遺伝学者ゴールトンが首唱。
(『広辞苑』第4版、岩波書店、1991年)
と説明されています。
この優生思想について、安積遊歩さんはこう語ります。
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優生思想は、私たち障がいをもつ人にとっては脅威であり許せないものです。
ところがこの思想があたりまえ過ぎて、当事者が「おかしい」と言われなければ多くの人はおかしいと思わない。そういう時代がありました。
でも今は、優生思想はおかしいんじゃないか、という共通認識が社会にあると期待して、オリンピックやパラリンピックの開催に反対する行動もしてきました。
青い芝の会(脳性まひの人々の障がい者運動団体)には四大行動綱領があります。
その四つ目に、「問題解決の路を選ばない」というものがあります。
これこそが、優生思想の対極なのです。
たとえば原発労働者を生む構造。経済格差を利用して、貧しい人をかり集めて被ばく作業をさせる構造の底にも優生思想があります。
被ばく労働に誰もいかないのなら自分がいくしかない、という犠牲的な精神の裏にも、優生思想があります。役に立つ命とそうでない命があって、自分たちが必要とされる存在になれば、社会にとって役に立つ命の仲間に入れる、という考え方がそこにはあります。
問題解決の路を選ばない、ということは、逃げられるなら逃げればいい、まず生きることが大事だ、というメッセージです。問題解決が先ではなくて、まず命を大事に逃げて逃げて、どう生きていけばいいのか、というような問題は後から考えればいいのです。
新型コロナウイルスのワクチンも接種が社会的に推奨されていて、打たない人を非難する人がいますね。自分は打つ、自分は打たない。そういう一人一人の決断を尊重することができない社会になっています。打つか打たないか、二者択一を迫るのも、私に言わせれば優生思想です。二者択一じゃない選択は、いっぱいあるのだから。それこそ、多様性のレッスンだから。
ただ、情報の格差については、本当に心が痛いです。情報を求めることに、すべての人に道が開かれていない……それもまた優生思想のためでしょう。
違う人、違う考え、違う生き方を尊重するということ。誰もが尊重しあって生きられる社会は、まだ実現できたためしはありません。
そういう意味で、このコロナ禍は、旧優生保護法がなくなってもまだまだ社会に蔓延している優生思想への、ものすごいチャレンジです。
一人一人がどうすればお互いの決断を認め合って、気持ちよく暮らしていくことができるのか。
9月18日の講演会では、こんなお話をできればと思っています。
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