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第19回 胸が張る

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伸び縮みするのはどこ?

「体の中で、なにかあったら、普段の大きさより、大きくなるところってどこですか。いちばん大きくなるところはどこだと思いますか」。

お医者さんや看護師さんを養成するような大学の講義で先生からこういう質問をされても、学生たちは、みんなちょっとくすっと笑ってしまうと言います。若いあなたもちょっと、笑ってしまうのではないかな。みんな、だいたい、まず想像することはだいたい同じなんですよ。くすっと笑ってしまう。

しかし、いいえ、体の中で普段の大きさよりいちばん大きくなるところは、ペニスではありません。残念でした。それは子宮です。

連載の初回でも書きましたが、子宮はあなたのお腹の下の方、恥骨(ちこつ)という骨の奥くらいにあって、ちょうど冷蔵庫にあるたまごよりちょっと小さいくらいの大きさです。そこで赤ちゃんが育つのですけれど、赤ちゃんが育って、生まれるころになると、子宮は小さなたまごの大きさの100倍くらいになっている、と言います。100倍。すごい大きさですね。

100倍くらいになった子宮は、とき満ちて赤ちゃんがお腹を出ようとするとき、しっかりと収縮を繰り返して、赤ちゃんの旅立ちを助けます。そして赤ちゃんが出てしまった後は、もとの大きさに戻っていくのです。

手に取ったりさわったりできるもので、ちょっと想像してもらってもいいかもしれません。ゴムをぎゅーっと伸ばすとか、小さなものを広げる、とか。なにかを100倍に伸ばすことってそんなに簡単じゃないし、広がったものをまた、もとの大きさに戻すことは、もっと大変なこと。それが古今東西、世界中の女の人のからだの中で、太古の昔から行われていること。そして一人の女の人のからだで、それが何回も繰り返されるなんて、ほんとうに驚くべきことですね。

赤ちゃんと子宮

生まれた赤ちゃんは、小さくてふにゃふにゃしていてなにもわかっていない、と思うかもしれません。でも赤ちゃんには、生まれたときから、生き延びるための力がいろいろ備わっています。

生まれたばかりの赤ちゃんを仰向けのお母さんのお腹にそっと乗せると、赤ちゃんは自分でお母さんのお腹をずるずると進んでいってお母さんのおっぱいまでたどり着き、自分でおっぱいをくわえて吸いはじめます。そういう映像をスウェーデンの方が撮っておられて、それを見た私たちはみな、びっくりしたものですが、赤ちゃんにはそういう力があるのですね。赤ちゃんには、生まれてすぐ、お母さんのおっぱいにたどり着き、また、おっぱいがそばにあると、ちゃんと自分で吸う力があるのです。

この、「出産直後におっぱいを吸わせる」ことで、100倍の大きさになった子宮がよりよく収縮していきます。

大きくなった子宮は赤ちゃんが出て行ったあと、もとの大きさに戻らなければなりません。そこで、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうと、ホルモンの働きで子宮の収縮がよくなるのです。

大きくなった子宮から出て行った赤ちゃん自身が、自分の食べものを得るためにおっぱいを吸う。その行為自体が、大きくなった子宮がもとの大きさに戻ることを助けているなんて、人間のからだはうまくできていますよね。

生まれたばかりの赤ちゃんはいっしょうけんめいおっぱいに吸いつきますが、最初から、母乳がざあざあ出るわけではありません。はじめのうちはほとんどなにも出ないのです。それでも赤ちゃんが吸い続けていると、どろっとした少し黄色い、濃いおっぱいが出てきます。

これは初乳、とよばれます。初乳の中には免疫成分、とよばれる、いろいろな病気から赤ちゃんをまもる成分がたくさん含まれていると言います。ですから、この初乳を赤ちゃんに飲んでもらうこと自体も、あなたのからだから、赤ちゃんへの大きな贈りもの、と言えるのですね。生まれたばかりの赤ちゃんが、この世界でより健康に生きていけるように、というあなたの願いを乗せた、贈りもの。

おっぱいも別に時間を決めず、赤ちゃんがほしがるときに与えていると、自然に母乳によって、赤ちゃんが育つようになっています。そうしてずっと赤ちゃんにおっぱいを吸い続けてもらうことが、子宮の戻りを助けている。繰り返しますが、ほんとうに体はよくできています。

おっぱいと子宮

初乳の時期が終わって、さらさらしていて、白くてちょっと透明な感じのおっぱいがどんどん出るようになると、あなたと赤ちゃんの「おっぱい関係」は、いい感じで回っていくようになります。

あなたのおっぱいには、いつも母乳が蓄えられているわけではありません。赤ちゃんのお腹が空くころになると、あるいは赤ちゃんが、おっぱいほしいよ、と、ちょっとむずかったりして、おっぱいに吸いつくと、あなたの乳房は母乳をその場でさっとつくります。

それはどういう感じかというと、「胸が張る」感じ。

あなたのおっぱいは、今はふにゃふにゃと柔らかいですよね。おっぱいが大きい人も小さい人もいるかと思いますが、大きくても小さくても赤ちゃんが生まれると、ちゃんと母乳が出ますから、心配ありません。

とにかく、おっぱいが小さくても大きくても、母乳がつくられるような状態になると、おっぱいはぐっとかたい感じになります。これを「胸が張る」と、よんでいます。

つまりですね、赤ちゃんにおっぱいを吸われると、刺激されておっぱいは張ります。そして母乳がつくられ、赤ちゃんに届けられる。それと同時に、子宮が収縮して、もとの大きさに戻ることが助けられていくのです。「おっぱいが張る」と「子宮が収縮する」ということに関連がある。そのことを、覚えておいてくださいね。

幸せは用意されている

赤ちゃんにおっぱいをあげることは、この上もなく幸せな経験です。

ぐっと張ってかたくなったおっぱいは、赤ちゃんが吸ってくれることで母乳が出ますので、またふにゃふにゃのおっぱいに戻ります。いっぱいになった乳房が赤ちゃんに吸ってもらうことでからになっていくかんじは、ちょっと変な言い方だけど、おしっこしてすっきりした、うんちしてすっきりした、ということとちょっと似ています。それよりもっと、うーんと気持ちいい感じ。

それもそのはず、このおっぱいが張ったり、母乳がぴゅーっと出たり、子宮が収縮したりすることには「オキシトシン」というホルモンが関係していて、そのホルモンは「幸せホルモン」なんてよばれることがあるくらい、「出るとハッピー」な気持ちになるものなのですよ。私たちのからだには、たくさん幸せになるきっかけが用意されているのです。

子宮は赤ちゃんを押し出すときにも収縮しますが、赤ちゃんをつくるときにも収縮することがあります。

精子が卵子のもとに届きやすいように、子宮が収縮して、いわば、受精を助ける、とでも言いましょうか。これまた、うまくできているものなのです。それは妊娠するときだけではなくて、普段のセックスでも起こります。

若いあなたはこれから男性とも愛し合うようになるでしょう。男性と愛し合い、すばらしい夜をともにすごして、次の日の昼間になんとなく胸が張る、ということを経験する女性は少なくありません。そのときには、「子宮の収縮」と「胸が張ること」は関係あるんだったな、と、思い出してみてくださいね。

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