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第4回 胸のふくらみ

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少女のための性の話_三砂ちづる_ヘッダー画像

からだの変わり目

こどものころは男の子も女の子も、ぱっと見では男か女か、わからないような体型をしていました。もちろん、はだかになると、いうまでもなく、男の子か女の子かわかりますけど、はだかじゃないと、似たようなものなのです。どの国や文化でも、親をはじめとする周りの大人が、髪型とか服装とか、男女でかなり違う格好をさせるから、ああ、この子は男の子、女の子、とわかる程度です。

ぱっとみて、かなり男らしく、あるいは女らしくなってくるのは、ご存じのように、小学校高学年から中学校1、2年にかけて、体格から顔つきから背格好から、どんどん変わってくる時期以降です。それからあとでももちろん、本人の努力と好みしだいで、男でも女のように見える格好をすることもできますし、女でも男の人のようにみせることはもちろんできますけど、基本的に、「ぱっと見で男か女かだいたいわかる」感じになってゆく。そういうものです。

そんなふうに、女に変わっていくあなたの体で、一番自分でも、外から見てもはっきりわかるのは、あなたの胸、ではないですか。

ぺったんこで、誰に見せてもかまわないようなこどもの胸だったのに、あるときから、胸がちょっと痛いような感じになってきて、少しずつ胸がふくらんでくる。そうすると、なんだか人前でさっさと服を脱ぐのも、お父さんや男のきょうだいとお風呂に入るのも、ちょっとためらうような気持ちになったりするのです。

何とも複雑な気持ちですよね。胸がだんだんふくらんでくる。ちょっと痛いし、気持ちわるいし、乳首が目立ってきて気になるし。

ヒトはタマゴから生まれない

身もふたもない話に聞こえるかも知れませんが、これこそが、人類が哺乳類である、あかしなのです。

人間はタマゴから生まれない。あなたのおとうさんとおかあさんはタマゴをあたためてはいない。あなたはおかあさんのおなかから生まれ(実際にどうやって生まれるかは、おいおい、この連載でもとりあげましょう)、産んだおかあさんのおっぱいを飲んで育つ。イヌやネコやハムスターやクマやライオンとおなじように、おかあさんのおなかから生まれ、おかあさんのおっぱいを飲んで育つ哺乳類。「乳を出して赤ちゃんを育てる」からこそ哺乳類。

人類のメスであるあなたの胸が大きくなってくるのは、哺乳類として次世代に乳をやるためです。ほんと、身もふたもない言い方です。でも、それが本来の「いま大きくなりつつあるあなたの胸」の役割です。

あなたの胸はだんだんふくらんでくる。乳房が大きめの人も小さめの人もいるけど、みんな、だんだんふくらんでくる。ぽちっと単なるしるしみたいだった乳首は、すこしずつきれいなピンク色になって、大きくなってくる。これはすべて、本来、「将来のあなたの赤ちゃんが、しっかり吸いついておっぱいを飲むため」の準備であります。こどもを産まない人も、産みたいけれど産めないかもしれない人も、もちろんいるんだけれど、多くの女たちは、大人になったらこどもを産みます(だから人類が続いていきます)。

産んだこどもは育てる。次世代は育てる。それは生き物の定めです。自分が死んでも,次世代を育てようとする。メスに食べられてしまうカマキリや、いのちが果てるほどの苦労をしても川をさかのぼりつづけるサケの行動も、次世代のためでしょう。わたしたちも、自らのいのちをかけて次世代を育てるのです。大きくなっていくあなたの胸は、哺乳類として、次世代を、身をもって育てていくことのあかしです。

「乳」といえば……

まだ胸も大きくなっていないあなたにとって、その胸から「乳が出る」っていったいどういうことなのか、さっぱりわからないですね。実際、こどもを産んでおっぱいをあげていない女の人は、おとなになってもわからないかもしれません。

「乳」についてあなたのもっているすべてのイメージは、おそらく「牛乳」だと思う。冷蔵庫に1リットルパックで入っている牛乳。給食のとき200ミリリットルパックで出てくる牛乳。白くてちょっととろっとしていて、なかなかおいしい牛乳。それは、名前のとおり、「牛」の「乳」です。ウシのおっぱい。

それはもともと人間が搾乳させていただいて、乳牛農家が出荷し、流通ルートにのせて、パックに詰めて人間の冷蔵庫に入れるためのものではなく、母ウシが産んだ子ウシのためのものでした。

子ウシがいるから、母ウシはおっぱいを出す。つまりは、いまのわたしたちがおいしく飲む牛乳を出してくれている母ウシには、産んだこどもがいるのです。こどもを産んでいるから母ウシは牛乳を出すことができる。このあたり、いつか乳牛農家にお邪魔して、母ウシからどんなふうに牛乳を出してもらって、出荷しているのか、聞きにいくのも、興味深いことですね。

つまりあなたの「乳」のイメージは「牛乳」です。ですから、赤ちゃんを産んだら、自分の胸から「牛乳」のようなものが出ることをイメージするかもしれないけど、人間の「乳」は、かなりちがいます。

たしかに白いんだけど、牛乳のようなこっくりした白い色ではなくて、もっと透明感のある色をしています。牛乳のようにとろっとしてはいなくて、もっとさらっとしています。実際に飲んだり、なめたりしてみたらわかりますが、味も牛乳のようなコクや甘みは感じられず、ごくあっさりとした味をしています。そしてそれはもちろん、人間の赤ちゃんが育っていくにあたって、いちばんぴったりのものになっています。哺乳類ですから、自分の「種(しゅ)」が続いていくために、ぴったりオーダーメイドされた乳を出すことになっているのです。

おっぱいというしあわせ

さらに、冷蔵庫の牛乳のイメージが大きいから、「赤ちゃんを産んだら母乳が出る」というと、あなたのおっぱいに「牛乳パックに入った牛乳のごとく」母乳がためられるようになる、と思うかもしれない。1リットルもためたら、重いだろうなあ、とか思うかもしれない。そのような心配はいりません。

あなたの胸は、たしかにこどもを産むと大きくなりますが、その胸にいつも「乳」をためておくわけではありません。あなたのおっぱいは「乳」の保存を担っておらず、「乳」の製造を担っております。こどもを産んで、赤ちゃんを育てているお母さんでもおっぱいにいつも母乳をためているわけではない。おかあさんの乳房は、赤ちゃんがおっぱいを欲すると、その場で母乳をつくるのです。

赤ちゃんが泣いたり、おっぱいをほしがるころになると、お母さんの胸は母乳をつくり始めます。どんなふうに感じるかというと、胸がぎゅっと張るような感じがする。一瞬でできる、っていう感じ。あなたのいま、大きくなりはじめている胸は、赤ちゃんの声に反応するようになるのです。胸がぎゅっと張るのは、赤ちゃんのために母乳がつくられた、ということ。ぎゅっと張ってきた胸を出して、乳首を赤ちゃんに含ませ、赤ちゃんが吸いつくと、母乳がざっと出てくる。製造即販売、という感じで、いつも新鮮な母乳が赤ちゃんに供給されるのです。

物理的に胸が張るのは、何とも切なく、甘い思い。それをすぐに赤ちゃんに吸ってもらって胸の張りがとれていくのは、なんともよい気持ち。大好きな赤ちゃんを胸に抱いて、うっとりしながら、からだもどんどん気持ちよくなっていく。赤ちゃんもおなかがいっぱいになって、この上ない満足に包まれていく。

そのうち飲み疲れてうとうとしはじめるころには、あなた自身も胸の張りがとれて「出すべきものを出した」すっきり感につつまれ、赤ちゃんとふたりだけの至福の時が訪れる。大きくなっていくあなたの胸には、こんなすてきな世界、あなたの知らない、実に美しい感覚が隠されているのです。楽しみにしていてくださいね。

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