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人口減社会で教育はどうあるべきか? 内田樹・寺脇研・前川喜平『教育鼎談』の未収録原稿を公開

暗算ができる人は知っている。日本の合計特殊出生率の意味するところを前川さんが解説。
これから起きる急激な人口減少に、私たちは、そしてこの国の教育は、どう対応すればよいのでしょうか。

寺脇 15歳以下って、2022年の推計によれば、たった1465万人しかいないんですよね。しかも、減る一方なんですから。

内田 どんどん減る一方ですね。

寺脇 出生数が90万を切ったとか言われていて。

前川 80万人を切るのはもう時間の問題です。合計特殊出生率が1.34。合計特殊出生率というのは女性一人が一生に生む平均の子どもの数です。1.34という数字は、一世代過ぎると、つまり30年後には、生まれる子どもの数が0.67になるということです。30年で67パーセントになるということは、50年で半分。100年経つと4分の1になってしまうんです。これから幾何級数的に減っていくんですよ、日本の子どもの数は。

2015年には100万人台だったのが、5年経ったら80万人でしょう。計算すれば簡単ですけれど、4分の1の累乗なんですよ。このままの出生率で100年経つと、100万人が25万人。200年後に16分の1、300年後に64分の1。500年後は4分の1の5乗ですから、1024分の1になってしまう。500年で1000分の1ということは、1000年後は、1000分の1×1000分の1で100万分の1になるわけです。合計特殊出生率が1.4くらいで続き、かつ外の血を入れない、この二つの条件を前提とした場合ですよ。1000年後には100万分の1。初期条件が100万人だとすると、1人です(笑)。つまり、1000年後には1年間に1人しか日本人が生まれないことになる。そういうわけで私は1000年後日本民族滅亡説というのを唱えているんです。

内田 2100年の日本人口って、一番低い推計は3700万人くらい。上位推計で6400万人。たぶん5000万人くらいになると思います。今の人口が1億2600万人。それが5000万人になるとして、80年間で7600万人減るわけです。すさまじい人口減ですよね。今の産業構造は大きく変わるわけですよね。

前川 そうですね。

内田 『教育鼎談』でも話しましたけれど、行政と医療と教育のセクターに資源を集中して、そこで雇用を生み出して、そこを経済活動の中心にするくらいの構造改革をしないと、とてもこの人口減には対処できないと思います。非営利的な産業が経済の中核を担う仕組みにシフトしていかないと。今の経済システムは「右肩上がり」と「人口増」を前提にして設計されたものですから、人口減で全部崩壊します。早く手を打たないと。

寺脇 前川さんのように暗算ができればすぐわかることなんですが、要するに逆ねずみ算ですよね。今はあんまり減っていないじゃないかと言う人がいるけれど、50年、100年先を見れば、どん、どんと人口が減っていく。ところが、今の大人たちは逃げ切るつもりでいるんですよね。とくに50代以上が。まあ私たちも含めてだけど。グレタ・トゥーンベリさんが国連の気候行動サミットで、「このまま逃げることは許さない」と大人に対して怒ったのは無理もないと思いましたけど、日本の人口政策に関しても、若い世代はトゥーンベリさんと同じ思いなんじゃないでしょうか。

前川 私はね、移民が必要だということは、言えると思います。

内田 ええ。

前川 我々の仲間として受け入れる体制を作って、いろんなルーツの人たちが一緒に暮らせる社会を作る。アジア人はDNAがかなり近いじゃないですか。ヨーロッパの場合は人種的に違う人たちが混じり合って暮らしていますけど、日本の場合、周りの国の人もだいたい似た顔をしています。まあ、朝鮮半島やモンゴルから来た人と、それからインドネシアやベトナムから来た人とが一緒になると、人種的にだいたい日本人になるわけです。

内田 中国大陸と朝鮮半島とポリネシアの三つの流れが混交して日本列島住民はできているそうです。だから、元をたどれば、みんな同じようなものなんですよ。

寺脇 人種的なルーツもありますが、中国の留学生たちに「子どもたちをよろしく」を見せたら、東アジア特有の家族主義に共感されます。個人主義の欧米人だったら「親がどうだって関係ないよ」と言われるけど、「やっぱり親の言うことを聞かなきゃならない」という点はすっと伝わる。それから『82年生まれ、キム・ジヨン』を教材に「この映画は韓国の話だけれど日本にもよく当てはまる。中国もそうだろう?」と中国人留学生に聞くと、中国も同じだと言いますね。お正月は舅の家に行って働かないといけないとか。

内田 日韓は家族のあり方がよく似ていますけれど、東アジアは食文化でも共通点多いですよね。中尾佐助の「照葉樹林文化論」があるでしょう。インドシナ半島から朝鮮半島、日本列島までって、生活文化が共通しているんですよ。納豆食べたり、お茶を飲んだり、竹細工作ったりとか。大きな文明圏をかたちづくっている。そのハブになるのが沖縄だと思うんです。沖縄を核にした照葉樹林文化圏でひとまとまりになるというのはいいアイディアだと思うんだけどなあ。

前川 僕もそう思いますね。琉球にはもともと「万国津梁(ばんこくしんりょう)」の精神があるわけですから。

寺脇 だからいがみあっていてはだめですよ、と学生には言うんですけどね。中国と日本も、韓国と日本も、いがみあったっていいことは何もありません。

内田 ぜひ、東アジア共同体を。いろいろな人種、言語、宗教を包摂する多文化・多民族社会をどうやって創り出すのか。どうやって他者と共生できるだけの市民的成熟を果たすか、それが当面の、喫緊の課題だと思います。

(了)

 

『教育鼎談』本編では、人口減社会における学校を中心とした社会のあり方など、これからの教育ビジョンが提案されています。

教育鼎談 子どもたちの未来のために

特別鼎談★内田樹×寺脇研×前川喜平 公共とは何か〜学術会議任命拒否問題から考える≪前編≫

特別鼎談★内田樹×寺脇研×前川喜平 公共とは何か〜学術会議任命拒否問題から考える≪後編≫

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