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【書評】女性を理解するために男性にも読んでほしい『少女のための性の話』

 『少女のための性の話』は、男性が手に取るには何とも気恥ずかしいタイトルだが、是非とも、男性にも読んでいただきたい。

読書中の天使石像

 女性を生きるということは、この日本社会において過酷であると私は思う。

 先を生きた世代のお陰もあり、女性の社会進出は目覚ましいが、それでも長く続いてきた家父長制の影響も根強く、いまだに男尊女卑が現実の端々にみられる。

 女性であることで志望大学に合格できなかったり、家庭内でも仕事に加えて家事労働を女性が一手に引き受けるのが普通という風潮も、まだまだ蔓延している。会社内でもどんなに能力が高くても管理職に就けなかったり、キャリアをとるか、出産育児をとるか、という不本意な選択を迫られ離職せざるを得ないケースも多い。つまりは日本の現代社会では、女性というだけで割を食うのである。

 たしかに女性は結婚し、子を産み、育て、死んでいく存在である、という歴史が長く続いてきた。その歴史を深く見つめながらも、三砂ちづるさんは、女性として生まれてきた、この上ない喜びについて語る。

 妊娠すること、出産すること、子を育てること、社会の中で女性として働き、この世界に深く関わっていくこと。そのどれもが素晴らしいことであり、女性でなければ与れない豊穣な喜びである、と。

 女性であることの誉れ、女性であることの喜びに光をあて、割を食ってしまう社会の現実に下を向いてしまう女性たちに、やさしく寄り添い、力強く励ますのである。

 少女の性はお金になる産業と捉えられる側面もあり、少女の性は危険と隣り合わせであるのも現実だ。しかし本来の性は、温かくふくよかな歓びに満ちている。三砂ちづるさんは、そうした性の本質を語っているのだ。そこには、新しい生命を産み出せる女性という存在の全肯定があり、次世代を生きる全ての女性に幸せあれ、という三砂ちづるさんの祈りが込められているようにも思う。

 男性にとって、女性の性は尽きない興味の対象であり、性行為と短絡的に結びつけてしまいがちなのが、残念ながら現実であると思う。正直、男性にとって女性という存在や、とりわけ女性の性は、全くもってよくわからない。わからないがゆえに惹かれ、また衝突も多々起きてしまうのではなかろうか。

 本書は女性の性という、女性の根幹について書かれているので、女性を理解するのに大いに役に立つと思う。若い夫婦なら、妻の妊娠、出産、そして育児にやさしく寄り添える夫になれると思うし、小中高生の娘をもつ父親なら、娘の身体の変化についての理解や、女性として生きることとはどういうことなのかを考えるキッカケになると思う。

 本書を読んでいて、男性である私が、あたかも我が身の性として女性性を見つめる実感がもてたような気がした。

男性としてなら尽きない興味の対象としてみてしまう女性の性を、自分の性として見つめる視点がもてたのは驚きであった。男性が、我が身の性として女性の性を見つめる視点がもてたなら、妻に対しても娘に対しても、敬意をもってもっとやさしく接することができるようになるのではないか。

 本書は、女性と男性の間に平和をもたらす一冊でもあると思っている。(三井ヤスシ・イラストレーター)

少女のための性の話

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