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新刊『デンマーク式生涯学習社会の仕組み』を一部抜粋して紹介

10月28日に発売した新刊『デンマーク式生涯学習社会の仕組み』のまえがき(はじめに)から、本書の構成として、各章の内容を少し詳しくご紹介します。

本書は全5章から成る。

第1章は、回り道や寄り道が可能な小学校から大学までの学校制度について描出している。前半にあたる第1節では、初等教育から前期中等教育までを対象とし、国民学校(folkeskole)や10年生、高校進学前に可能となるオルタナティブな進路といった選択肢について説明したのち、学校の歴史を振り返っている。さらに、現在、どのような国家目標の下に学校教育が位置づけられているのかを解説している。後半にあたる第2節では、後期中等教育から高等教育までを対象とし、中学校卒業後から複雑に分岐する複線型の学校制度や、デンマークの大学、職業アカデミー、専門職大学といった高等教育機関の種別のほか、日本とは大きく異なる大学入試の方法について解説している。

 第2章は、複雑に分岐する学校制度の背後にある、若者の進路移行を支える教育機関とガイダンス制度の実際を取り上げる。EU内でも共通した課題となっている後期中等教育期にある若者の離学や雇用不安に対し、デンマークの各種の制度がどのように対応してきたのかが焦点となる。2004年以降、徐々に拡充されてきた進路指導のためのガイダンス制度のほか、ノンフォーマルな教育制度に位置づけられる若者学校、エフタスコーレ、生産学校について解説している。

 第3章は、若者の政治参加をテーマに、それを可能にしているデンマークのユースカウンシルという機関を取り上げる。地方自治体が設置する若者政策提言組織は日本を含め各国に見られるが、デンマークでは1980年代に「若者の社会的排除」が社会問題となった時期以降、順次設立され、全自治体の半数近くに団体があったことが確認されている。デンマークのユースカウンシルは、団体ごとに活動のスタイルも内容も異なるものの、若者の政治参加を目指す際には、若者が主体であるという視点、そして日常生活での対話を基本とする姿勢が共通し、それが普通の若者たちの政治参加を可能にしている。

 第4章は、成人教育を取り上げる。19世紀半ば、農閑期に農民が集い学びあう自主的な学校フォルケホイスコーレ発祥の国として知られるデンマークには、現在まで、成人を対象とする多様な成人教育の機関と制度が存在する。補償教育を可能にする普通成人教育、学び直しと進路変更を可能にする職業成人教育、人生を見つめ直し自主的に学ぶための自由成人教育といった成人教育の種別は、いずれもデンマークのもつ広義の「教育」を実質的に支える制度となっている。

 第5章は、デンマークの自治体で中心的な社会教育施設として機能している、デンマークの公共図書館について取り上げる。近年、デンマークの公共図書館は、教育と福祉と地域サービスの拠点として活用されるようになっている。ICT支援、生活困窮家庭支援、父親の育児参加、移民・難民に対する図書館サービス等、図書の収集・維持・管理を超えて多様に展開されるプログラムがなぜ可能なのかを解説している。

 本書の目的は、デンマークの生涯学習社会の概要を描き出すことである。ひとりひとりがレゴを組み立てるようにライフコースを決定できるのは、どのような機関や制度があるからなのかという問いを中心に本書は構成されている。そのため、各教育段階においては、いくつかの論点を省略せざるを得なかった。たとえば、日本の読者にもなじみ深い森の幼稚園の実践を生み出している就学前教育に関しては、取り上げていない。また、先進的な取り組みの多い特別支援教育についても紙幅を割くことができなかった。さらに、学校教育においても、その他のノンフォーマルな教育機関においても、それぞれどのようなカリキュラムを採用し、どのような教材を活用し、どのように教員を養成しているのかといった点に関しては、部分的な言及にとどまっている。けれども、デンマークに関する在住者のブログや研究者の論文においてもしばしば断片的な紹介にとどまっていた、デンマークの教育制度の全体を見渡せるようできるだけ留意したつもりである。

(『デンマーク式生涯学習社会の仕組み』「はじめに」より抜粋)

デンマーク式 生涯学習社会の仕組み

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