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知ってた? 人生を変えるお産の話〈前編〉〜『家で産まれて家で死ぬ』座談会@つちのこや 参加リポート〜

知ってた? 人生を変えるお産の話〈前編〉

都内に残る懐かしいスポット

東京・多摩地域と川崎方面を結ぶJR南武線に人生二度目くらいに乗り、谷保駅を降りる。「おお、ここは本当に国立市……?」と目を疑う地域感。そう、この谷保周辺は国立市の観光サイトで「都内にいながら、のどかな景色が楽しめる」として紹介されるエリア。森のようちえん「谷保のそらっこ」を運営する佐藤有里さんが、『家で生まれて家で死ぬ』の中で「向こう三軒両隣の世界が今も続く」と語っているのも頷ける。

甲州街道へ出て、二七〇年近い歴史をもつ谷保天満宮の鳥居を視界に入れながら会場へ急ぐ。徒歩数分で、無事「やぼろじ」と「つちのこや」の看板を見つけ、塀の中へ入ると絵に描いたような古民家と立派な梅の木。一面雪景色の北国から本州へ移動すると「日本列島って長いんだな……」といつも感じる。

ここが、この日の座談会会場、田畑とつながる子育て古民家・つちのこや。NPO法人くにたち農園の会が運営する、地域の子育てをサポートする民間施設だ。食堂やワークショップなどイベント施設としても活用され、フェイスブックがいくつあるんだったかしら? とご担当がつぶやくほどその活動は幅広い。各地で「子育て支援の居場所づくりをしたい!」と思っている方が訪れたら、いろんなヒントがもらえる場所である。

写真提供:NPO法人くにたち農園の会

5400人の赤ちゃんをとりあげた矢島さんのお話

会場のすばらしさをお伝えしたくて前段が長くなったがこの日は、定期開催されている「つちのこやフェスタ」のプログラムのひとつで、『家で生まれて家で死ぬ』の「生まれる」について語り合う座談会が開かれた。

5人のお子さんを家で出産し、1年前に義父を家で看取った佐藤有里さんは、先述のように森のようちえん「谷保のそらっこ」の代表を務める一方、くにたち農園の会の理事でもある。その佐藤さん司会のもと、矢島助産院院長の矢島床子さんのお話が始まった。

矢島助産院で生まれた赤ちゃんは、約5400人(2018年2月現在)。

この約110年で、産むことと死ぬことが大きく変化した。かつては、家で生まれて家で死ぬことが当たり前の時代があった。矢島さんは自身の体験から自分の家で生むよろこびを、またお姉さんを看取った体験から、満足感に包まれて人生最期の時間を過ごすことができることを、多くの人にお伝えしたい、と言う。

写真提供:NPO法人くにたち農園の会

矢島さんを変えた体験とは・・?

生まれることはよろこび。それは誰も否定しない。

さらにそこには、「産む女性としてのものすごい快感と、充足感があるのです」と矢島さんは言う。それは、出産した当事者である女性の、その後の人生をガラリと変えてしまうほどのインパクトをもつ。でも、そうした話は、多くの女性にとって新鮮な情報なのではないだろうか。筆者自身も開業助産師の存在を知るまで、「産む快感」なんて聞いたことなかったし、だれもおしえてくれなかった、と感じた。

矢島さん自身が、そうした原体験をもとに、矢島助産院を立ち上げた。それまで、「子育ては苦しかった」と矢島さん。コーヒー1杯飲みにいきたい、でもそれさえできないのが、母親一人が孤独な子育てを強いられたケースの、子育ての現状だ。

私は助産師なのに。大切な赤ちゃんなのに。赤ちゃんにやさしくできない自分。その後、矢島さんは、師匠と呼ぶ三森助産院の三森さんの介助で長女を産んだ。そのお産で自分を肯定し、前向きに子育てに向き合える自分に変身したという。

詳しくは『家で生まれて家で死ぬ』にも書かれているが、矢島さんは「フィーリング・バース」という言葉を提唱している。フィーリング・バースとは「方法」ではない。「自分を感じること、そのもの」というお話が心に残った。〈後編へ続く!〉(文・ミツイパブリッシング編集部)

 

“たまちゃん”こと小湊玉正さんのランチがまたすばらしく美味。済州島の家庭料理とのこと。つちのこ食堂のスケジュールも要チェック!

写真提供:NPO法人くにたち農園の会

 

【イベント】2月18日開催 座談会「いのちをはぐくむ~家でうまれて家で死ぬ」赤ちゃんとの暮らし in 国立

家で生まれて家で死ぬ

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