最新記事
12.52020
ハッシュタグ「#税別表示で困りません」「 #出版物の総額表示義務化に反対します」その後
今年9月、「#出版物の総額表示義務化に反対します」のハッシュタグがツイッターのトレンドに入った。
本を作る仕事に就いて25年。出版社を立ち上げてもう7年の身としては恥ずかしい限りなのだが、寝耳に水の話だった。慌てて関連情報を集め、状況を自分なりに理解した。
お手元に本がある方はご確認いただきたい。
2020年現在、ほとんどの本の価格表示は「定価:本体○○円+税」などとなっている。
しかし消費税が導入される以前は、当然ながらシンプルに「定価○○円」と表示されていた。(細かく言うと書式はいくつかある)
消費税の導入は、1989年。
2004年には、税込み価格を表示する「総額表示」が消費者には分かりやすいだろう、ということで、価格表示をする場合は総額表示が義務付けられた(注1)。
しかし本の場合はカバーに定価を刷り込むため、消費税率が変わるたびにカバーを刷り直しするのかという問題が生じる。
消費税導入時、「定価1030円(本体1000円、税30円)」という表記が義務付けされた時には、2万タイトルが絶版に。全体で百数十億円の経費がかかったという報道もある(注2)。
総額表示が義務化された時には業界団体が財務省と打合せて、スリップ(買う前の本にはさまっている細長い紙)に総額表示をするというガイドラインを作成。カバーの「本体+税」表示は維持された。当時尽力された方々には、本当に心からの敬意を表したい。
そう言えば私も2004年にはこの業界で働いていた。制作部の担当から「これからはこれでいいんだってさ」みたいな感じで書式を聞き、デザイナさんに伝えていた記憶がうっすらある。考えてみたら「本体1000円、税30円」って指定はした覚えがないなあ……忘れてるだけかもしれないけど。
さて時は下って2013年。
総額表示は義務ではあるけれど、消費者が間違わないような表示であればその義務が免除される、という特別措置が法制化。ただこれは、消費税が8%→10%と増税することがわかっていた間だけのものでした。業界団体の延長要望にもかかわらず今年の9月、来年の2021年3月末でこの法律が失効することが決定。その報道によって冒頭のハッシュタグが広がったのでした。
Twitterでつぶやくだけでいいのだろうか。できる範囲で何かしたいと思っていた矢先、「消費税法の改正を国に求めるよう出版業界団体に働きかけませんか?」という呼びかけが流れてきた。
待ってましたとばかりに、小社もすぐさま賛同社に加わった。
その経緯については、ころからの木瀬さんが「版元日誌」で書いている。
https://www.hanmoto.com/nisshi-bangai-20201112
そうして立ち上げられた「総額表示を考える出版事業者の会」では、次の提言を公表した。
「総額表示の一律義務化に反対し、消費税法の改正を提言します」
https://note.com/sougaku_kangaeru/n/n3dfe25259778
そして現在、次のアクションを展開中。
★賛同事業者大募集!
提言「総額表示の一律義務化に反対し、消費税法の改正を提言します」への賛同事業者を募集中。現在150社以上が賛同しています。
https://note.com/sougaku_kangaeru/n/n3dfe25259778
★個人向け署名もスタート! 個人で賛同くださる場合はこちらをチェックください。
「商品・サービスの税込表示義務をなくし、価格表示を自由化する法改正を求めます!」
http://chng.it/M4wK856KMq
この問題は本だけの話ではありません。上記の個人署名には出版社以外にも、「総額表示」で困る業界団体も賛同に加わっています。
注)
1 財務省ウェブサイト「消費税における「総額表示方式」の概要とその特例」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/sougakuhyoji_gaiyou.htm
2 「全国商工新聞」2020年11月23日付。