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相模原事件から3年。安積遊歩さん「私たちが存在でひっくり返す」

 NHKのハートネットTVで安積遊歩さん、宇宙さんを追ったドキュメンタリー「母から娘へ~いのちと尊厳のバトン~」が放送された。
 3年前の今日、神奈川県相模原市の津久井やまゆり園という知的障がいをもつ人々が暮らす施設で、入所者19名が殺される事件が起きた。
 加害者が犯行に及んだ理由が「障がい者は不幸を作る」という理由だったことが報じられて、多くの人がさらに衝撃を受けた。
 家族や近しかった人びとの悲嘆は、ここでとても言及できるものではない、と思う。
 そして同時に、「私もそうなるかもしれない」と恐怖を抱いた人々が、少なからずいた。障がいをもつ人々だ。
 安積遊歩さんと宇宙さん、ご自身も恐怖を感じた立場だったが、いつも誰かの相談を受けているピアカウンセラーの遊歩さんの元にも、そうした声が届いた。その悩みに答えるかたちで、お二人に気持ちを語っていただいた。

やまゆり園事件のあと、外出が怖くなりました 前編

やまゆり園事件のあと、外出が怖くなりました 後編

 「母から娘へ~いのちと尊厳のバトン~」では、この事件をきっかけにフリーハグを始めた宇宙さんの紹介から、母親の遊歩さんの人生をふりかえる。パートナーとの出会い、宇宙さんの誕生。そして現在はニュージーランドで大学生活を送る宇宙さん、札幌でシェアハウスの同居人たちと暮らす遊歩さん。遊歩さんのパートナーのお母さん(宇宙さんのお祖母さん)が、初めは「自分が差別の先頭に立っていた」という語りも、よくぞ話してくださったと思うシーンだった。
 そうして母娘のそれぞれの人生をたどり、最後に相模原の事件をめぐって母娘が対話する。遊歩さんの「累々と、優生思想がこの社会の根幹であるということを、私たちが存在でひっくり返すチャレンジをし続けているよね」
 という言葉が、もっとも本質を突いていたように思った。

 ほんの二十数年前まであった優生保護法という法律のもと、この国はオフィシャルに、障がいをもつ人に不妊手術を強制してきた。昨年ようやくその被害者が声をあげることができ、全国で裁判が行われている。
 今年の1月、宇宙さんの講演会で、主催者の方がこう言っていた。
 「あの法律が(遊歩に)及んでいたら、宇宙ちゃんも生まれてこれなかったかもしれないんだよね」
 「障がいをもって生まれてよかった」と自然に話す宇宙さんは、今年23歳。宇宙さんの誕生から成長にかかわった人々(テレビでは総勢50人で子育てと言っていたが、累計すれば100人は超すのでは)や友人知人のみならず、障がいをもたない同世代にも、宇宙さんの生き方は大きなインパクトを与えている。
 遊歩さんが宇宙さんに渡したバトンは、「いのちの選別」というパンドラの箱に残った、希望と言ってもいいかもしれない。

 相模原事件から3年たった命日の月に、重度の障がいをもつ国会議員が二人、誕生した。この偉業は海外からも注目されている。
 「いのちの選別」に向き合う気運は、確実に高まっている、と思いたい。

「母から娘へ~いのちと尊厳のバトン~」は7/30(火)13:05〜再放送
https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/heart-net/1083/


「やまゆり園事件のあと、外出が怖くなりました 前編・後編」のロングバージョンはこちらに収録!

多様性のレッスン 車いすに乗るピアカウンセラー母娘が答える47のQ&A

安積遊歩さん、宇宙さんについてもっと知りたい方はこちら

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