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「ありのままでいい」って本当ですか?

遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像

就職試験に落ちました。知識や技術、コミュニケーション能力等々、何か優れている所がないと、この競争社会では生きていけないと落ち込んでいます。ありのままでいいという言葉を書物などで見かけますが、ありのままではいけないと思えてしまうのです。(こころ・30歳・フリーター)

ありのままでいい社会を、一緒に作りましょう

ありのままでいいという言葉を本気で生きるためには、残念ながらその世界を自分たちで作る必要があります。おっしゃるとおり、すさまじい競争社会の中で、ありのままでいたとしたら、排除され、虐げられ、時に見えない存在とされてしまいます。

まずは、ありのままの自分というものが、どんな自分なのか見つめてください。つまり、競争社会をいやだと感じている自分、ありのままでいい、と言われてもありのままでは就職できないんじゃないかと不安を感じている自分、もう一歩進めて、ありのままでいけない、と感じさせられるこの社会の矛盾を知り、なんとかしたいと思っている自分。そうしたあなたが、私には見えてきます。決して、ありのままの自分、イコール、何も感じない、何もしないで好きなことだけしていきたい、と思っているあなたではない、と私には思えるのです。

ありのままでいいという言葉をよくよく聞いてみると、ありのままではいいけれど、わがままはいけない、という矛盾したメッセージが常に含まれています。

私たちは小さい時に、ありのままの自分を本当に愛していました。飛んだり跳ねたり、うれしいことも悲しいことも、それを感じている自分を責めることなく、表現していました。しかしそれも、ある時から、まわりの大人たちの態度やまなざしによって、ありのまま=わがままであると感じさせられてきました。つまり、ありのままの自分を、感じたり、表現したりすることが、いけないことだというように、感じさせられているのです。

動物である人間のありのままは、非常にアクティブであると思います。そのアクティブさをどんどん使って、さまざまな出会いを求め続けてください。そしてその出会いの中に、さらなる次の道が、必ず拓けていくことでしょう。

落ち込んでも、いくつかの深い人間関係と、さまざまな出会いを求めていけば、そこから立ち直ることはむずかしくはありません。そうした人間関係は、相談者さんのまわりにはどれだけあるでしょうか。就職試験に落ちて、ゆっくりする中で、ありのままでいい社会を作るために、どんどん自分の興味のある方向に動き、出会いを重ねてください。

人は、どんなに落ち込んでも、まわりに自分の力を必要としている人がいることに気づくことさえできれば、希望を見続けることができます。時間のたっぷりある今現在をチャンスと考え、小さな子からお年寄り、あるいはさまざまな言語を話す人、自分とは違ったからだや個性を持つ人たちとつながって、本当のありのままとは何かを見つめ、出会う機会としてください。あなたの力を待っている人は必ずいます。ありのままで生きられる社会を、あきらめず作り続ける仲間となってください。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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