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1.172019
【発売まであと8日】『多様性のレッスン』あとがきの一部をご紹介
今日は『多様性のレッスン 車いすに乗るピアカウンセラー母娘が答える47のQ&A』のあとがきの一部をご紹介させていただきます。
あとがき 耳をかたむける
安積遊歩
人に悩みを語ることは、この均質化を求める社会の中で、それほど容易なことではありません。私自身、障がいをもっていることで、自分の悩みは、人とはまるで違っているのだろう、と感じさせられてきました。
一〇代では完全に沈黙し、思いを押し込めては自分を責めるばかりでした。
二〇代の時、障害をもつ人たちの運動に出会い、自分が自分であることを強烈に自覚しました。それからは自己主張を行うと決めて、行動し続けました。
自分であることを自覚し、主張していくうえでのターゲットは、この社会にあるさまざまな差別でした。二〇代の終わりに、とくに結婚をしたいという悩みを初めて行動化して、ボーイフレンドとの暮らしを始めました。そして障がいをもつことに加えて、女性という点でも、その差別の深さに向き合わざるをえませんでした。この国の女性差別は、時に想像を絶するものです。
そして三〇代の初めには、自己主張するだけでなく、仲間たちの話を聞きたい、と思うようになりました。ピアカウンセリングの方法と理論を学び、仲間同士で気持ちと話をとにかく聞き合いました。立場や特質を共有する仲間と聞き合うことで、たくさんのことに気づきました。そして、障がいをもたない人にも、どんどん耳をかたむけられる自分になっていきました。
私が人の気持ちや話を聞く時の立ち方は、まず私自身を責めずに聞く、ということです。なぜなら、私自身に対する私の評価のまなざしは、話し手にも容易に伝わってしまうからです。
しかし自分に注目し出すと、いろんな思いがわいてきます。そうした思いに気をとられず、私は私でベストを尽くしている、という位置に立ち続けます。そうすると、「あなたもベストを尽くしてよく生きているよね」という、深い肯定的な思いで相手の話を聞けるのです。
この本は、一〇代は悩みを語れず、二〇代は怒りと悲しみを社会にぶつけまくっていた私が、三〇代で人の話を聞くことを学びはじめたこと。そして四〇代で娘を迎え、五〇代で聞くことの大切さを娘にも伝えられたこと。それらすべてへのお祝いであり、記念の本です。