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第12回創造性教育ワークショップ体験リポート< 後編>

のべ300名以上が参加してきた人気ワークショップ、川崎一彦さん(東海大学名誉教授、在スウェーデン)による「北欧に学ぶ創造性ワークショップ」第12回目のリポート、後編です。

スウェーデン画像

北欧の起業家精神教育を北海道で

話題提供は工藤優樹さん(東海大付属札幌高校教諭)。
工藤さんはフィンランドに学ぶ知的財産教育というテーマで、川崎さんと共同研究の実績をおもちです。

東海大には付属生対象の学園オリンピックという独自の教育プログラムがあります。その文化部門には知的財産部門があり、特許をもつ高校生もいるとか。

ほかにも、生徒たちで予算を決めて、広告、売り方まで考えてマーケットを開く中学校の授業もあるそうです。これらは、フィンランドのバーサモデル(就学前からの起業家精神教育)を取り入れた実践研究ということでした。

みんなにチャンスをつくる

注目すべきは、これを、学年単位で、300人という生徒全員で実践している点。工藤さんは言います。「もともと興味のある子がやるのは、もちろんすごくいいこと。さらに、今までまったく興味のなかった子に、こうした実践の場を与えること、体験してもらうことが非常に重要です」。

生徒からは「アイディアなんて全然出ないと思っていたのに、意外とできる」という、自己効力感を得たとわかる感想があったそうです。

さらに工藤さんは、「すぐに結果が出るわけではありません。多くのアイディアを出している生徒や学校に比べると、中身はたいしたことがないかもしれません。しかし、まずはすべての生徒に体験してもらうことが大切だと思います」と言います。

すべての生徒に体験してもらうこと。

フィンランドの教育政策では、「教育の平等」が中心におかれています。『みんなの教育 スウェーデンの「人を育てる」国家戦略』でも、「同等の価値がある教育」がめざされている、とアールベリエル松井さんは報告しています。

北欧の先生はどこが違う?

「北欧における創造性教育の特徴とは?」という質問がありました。
工藤さんは、教師の創造性と主体性が発揮できていること、社会に開かれた学校であること、の二点を挙げられました。

「プロジェクト型学習でも、仮想ではなく、実際に社会にあるものを使う」と言います。決定権を与えられ(フィンランドやスウェーデンでは、「どう教えるか」が自治体や学校、現場の教師に相当任されている)、創造性と主体性を発揮して、生き生きと生徒に向き合う先生の授業は、それは楽しく学ぶことができるでしょう。

生徒の自己効力感を上げるには?

「日本における創造性教育と自己評価についての手応えは?」という質問には、「上がっている感覚はある」と工藤さんのお答え。先に「意外とできた」という生徒の感想がありましたが、「アイディアを出せなかったけど、それはいけないよねと思った」という感想もあったそうです。

「何かを作ったり、主体的に行うことは、自己効力感の上昇につながります。北欧では、生徒が主体的に実践するさまざまな機会があります。

日本の場合は〈成績〉〈評価〉しかありません。たとえばスポーツで結果を出している生徒は、学校の成績がよくなくても、自己効力感があり、トライしてみようという意欲があります。主体的に取り組める場を与えること、選択肢を増やすことができればよいのでは。たとえば、どんなことでも友だちに評価してもらう場面があるだけでも、違うのではないでしょうか」(工藤さん)

AI時代の到来で、機械でできる仕事は将来なくなる、と言われています。子どもたちには、従来の教育だけでは足りない、という認識は一般的にもずいぶん広がってきたように感じます。

知識基盤型社会に応じた教育を志向する北欧の教育モデルは、今後ますます注目を集めることになりそうです。
(文・ミツイパブリッシング編集部)

 

リポート前編はこちら!

みんなの教育 スウェーデンの「人を育てる」国家戦略

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