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企業とLGBT+ -LGBT+ in the corporate world- by ソフィア・ヤンベリ

 みなさんこんにちは。『ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+』著者のソフィア・ヤンベリです。今は困難の時ですが、みなさんが元気で健康であることを願っています。

 先日、私は企業におけるLGBT+のあり方についてディスカッションするオンライン・イベントに、パネリストとして出演する機会に恵まれました。国際的な企業が主催のイベントでした。
 私のほかに二人のパネリストがいて、一人は職場のポリシーに関する専門家、もう一人は会社や団体のジェンダー教育と、インクルーシブな職場作りの専門家でした。
 私にとっては、会社がLGBT+という課題にどう向き合うのか、といった企業の倫理的責任と社会的責任について、議論するチャンスでした。議論はとてもおもしろく、学ぶところも多いものだったので、そこで私が考えたことをこの場でみなさんとシェアしたいと思います。パネリスト3名の画像

LGBT+フレンドリー企業に求められるポリシーは?

 最初の議題は、LGBT+の人を雇用するには、会社はどのようなポリシーを採用すべきか、という内容でした。ご一緒したパネリストの方々からは、私がとても思いつかないような視点を聞くことができました。パネリストの一人はアメリカのテキサスから、もう一人はフランスから来ていて、(私はスウェーデン人なので)パネリストはみんな、違う国から来ていたのです! つまり職場におけるLGBT+の話と言っても、パネリストはみんな、それぞれかなり違う経験をしてきている、ということです。
 いくつかの議論の後で、ゴールは共通だけれど、会社が拠点を置く場所や、それまでの方針によって、ゴールまでのプロセスは様々であるべき、という結論になりました。
 たとえば、差別を禁止するポリシーを導入するのにもっとも基本的なことは、LGBT+の従業員が法で守られていることです。法律の保護があれば、性的指向やジェンダー・アイデンティティを理由に差別を受けたとしても、しっかりした根拠をもって抗議の声をあげることができます。
 次に、管理職か、それ以上の役職に就く人は全員、何らかの研修を受けるべき、という話がありました。研修の内容としては、差別があったときの対処法だけでなく、LGBT+の従業員がストレスなく安心できる、インクルーシブでサポートが充実した職場環境の作り方が挙げられました。
 このような取り組みは、LGBT+コミュニティとつながりのない人にとっては難しいことかもしれませんが、研修の援助をしたり、差別禁止ポリシーの改善に助言するLGBT+団体に相談するのがベストである、という話でした。たとえばスウェーデンでは、社内のLGBT+適応力を向上させるため、RFSLという組織と、会社が協働することもできます。
 インクルーシブな環境とLGBT+適応力がある程度まで進んだ会社については、それ以上にポリシーを作ったり研修の機会を増やす必要はない、という話でしたが、私からは、それらの取り組みを継続して前に進めるための体制をしっかりさせることを提案しました。性的指向やジェンダー・アイデンティティについて社会はまだ学んでいる途中です。将来的に企業ポリシーを変更したり、追加する必要性が出てくるでしょう。社内体制の確立が素早くスムーズに進めば、時代に合わせてポリシーを追加したり、既存のものを変えていくプロセスを進める手助けになるでしょう。

企業に倫理的・社会的責任はある?ない?

 それから私たちは、企業に、社会に対する倫理的責任と社会的責任があるかどうかの議論に移りました。これまでは(そして今も)、会社にとっては「リスク回避」で論争を避けるのが常識でした。
 たとえば、LGBT+が社会的に受け容れられるようになってようやく、多くの会社がLGBT+コミュニティへのサポートを表明するようになりました。多くの会社がもっと早く、オープンにLGBT+コミュニティーを支援していれば、LGBT+の社会的受容はもっとスピードアップしていたでしょう。
では、モラルや倫理と言う時、会社はどのような責任を負うべきでしょうか?
 私の個人的な意見ですが、会社が現実の社会に影響をもつのなら、その会社には社会的責任も生じると思います。つまり、どんな会社や企業も周囲の世界に影響を与えているということは、否定できないことです。
 会社に勤めたり会社と協力する人は誰でも、職場環境や労働条件に影響を受けています。会社の商品はそれを使う人に影響力をもちますし、企業イメージや企業の価値観は、関わりをもつあらゆる人に影響を及ぼします。例えば、おもちゃメーカー会社のマーケティング戦略は、とくに西ヨーロッパとアメリカで「男の子のおもちゃ」「女の子のおもちゃ」が区別される大きな要因になっています。女の子にはピンク色、人形やメイク、料理などに関するおもちゃ、男の子には車など工業系や技術系のおもちゃというように、過度に区別して宣伝が行われています。

二人の子どもが室内で遊んでいる様子

Photo by Anna Shvets from Pexels

 こうした行き過ぎた区別は、このマーケティング手法が効果的で、収益も上がると会社が認識する前には、なかったものです。その後、「女の子のおもちゃ」で遊ぶ男の子はからわかれ、女の子は「男の子のおもちゃ」で遊ばないように、と言われてきました。
 このことから、会社とは、私たちの生活や社会的価値観に対して、広く影響を与えていることがわかります。そして長年、多くの子どもたちに制限をかけてきたこのマーケティング戦略は、モラルに反すると個人的には思っています。つまり、会社は社会に影響を与えるのだから、責任もとるべきです。

 モラルに関する疑問のもう一つの重要な側面は、会社は生きもののように語られがちですが、実際には、会社は個人で成り立っている、ということです。
 会社にモラルの責任があるかを問うよりも、人々にモラルの責任を問うべきではないでしょうか?
 会社のことは「関係ない」かのように、なぜ振る舞うことができるのでしょう?
 たとえば、環境問題について語る時——会社の有害ごみを投棄して環境を汚染している経営者が、自分の私的なゴミはリサイクルしているとします。その経営者はモラル上、正しいとは言えませんし、会社はモラル的に間違っています。なぜなら彼は、会社の行動に影響力をもっているのですから。

反LGBT+のマーケットでビジネスをするのは?

 モラルに関する議論の最後に、LGBT+コミュニティに敵対的だったり、会社と正反対のモラルをもつ国外市場で、企業はどのように振る舞うべきか、が議題になりました。
その市場に参入しなければよいのでしょうか?
 問題に目をつむればよい?
 たいていのことがそうであるように、私たちの結論はその中間に落ち着きました。結局、企業は、自らが参入する新しい市場において、市場それぞれがもつ文化的なファクターに意識的であることが重要だ、という話になりました。
次に、会社は新しい市場でも、性的指向やジェンダー・アイデンティティにかかわらず(たとえば、ゲイの従業員にとって同性愛が非合法とされる国で働くことは安心を脅かされます)、すべての従業員の安全と安心を確保しなければなりません。従業員の安全と安心を保証できない市場の場合は、会社はそこに参入する必要が本当にあるのかどうか、再考すべきと個人的には思います。それでも参入するなら、従業員が会社のために不利益を受けないように、ネガティブなことが起こりうる仕事には就かせないようにする必要があります。
 ビジネスのために新しい市場を支えるのですから、それはある意味、その市場の文化を支えることにもなります——この場合は、同性愛嫌悪の市場を支えるということです。これは、会社自身の価値観に反することですから、会社の倫理的責任を果たしながら同性愛嫌悪的な市場でビジネスをするのなら、地域のLGBT+団体や組織に寄附をしたり、LGBT+団体や組織と協力することで、会社が与える影響のよい側面と悪い側面のバランスをとることができます。

 最後までお読みいただきありがとうございました! とても興味深いトピックなので、関心をもっていただけたらうれしいです。もちろん、ここで紹介したのは私の考えと、パネルディスカッションでの議論だけで、この議論が唯一正しいと主張しているわけではありません。
 みなさんのご感想もお寄せいただけたらうれしいです!!

 

ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+

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