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ソフィア・ヤンベリのスウェーデン便り 第4回『6月は1番素晴らしい月』

『ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+』著者、ソフィア・ヤンベリさんの寄稿第4回を転載します。 ※過去記事はこちら

ソフィア・ヤンベリのスウェーデン便り
第4回『6月は1番素晴らしい月』

皆さん、こんにちは! ソフィア・ヤンベリです。今年もまた6月を迎えました。私も含めスウェーデン人はみんな今、スウェーデンの夏を思い切り楽しんでいます。

最近のストックホルムの空模様は晴れの日が続いていることもあってとても綺麗で、気温も25度を超える夏日が続いています。湖や海に行くと、平日でも多くの人で賑わっています。私も最近、仕事が終わってから何回か同僚と一緒に泳ぎに行きました。ストックホルムの人々は25度以上の夏日を楽しんでいるのは確かですが、この暑さに慣れているとは言えないです…事務所も暑くて、仕事中は誰もあまり元気がないです。

でも! 6月の終わりには夏至祭があるので、そろそろストックホルムの住民も暑い都会から各地の田舎に「逃げて」いきます。文字通り「避暑」ですね。今日同僚に今月の予定を聞いてみたら、8割ぐらいは夏至祭のある週には田舎に行くと言っていました。自分の別荘(サマーハウス、“Sommarstuga(ソンマルステューガ)”って言います)がない人は「友達の夫のおじいちゃんの家」とか、「彼氏のおばさんの別荘」などに行くと言っていました。ちなみに、私は今回初めて都会に残ることになりました…。

その「夏至祭」。じつは夏至祭は都会でなかなかお祝いできないんです。自然とのつながりが強いものなので、自然あふれる理想的な田舎のイメージも大事です。皆さんはカール・ラーションの絵を見たことがありますか? カール・ラーション(Carl Larsson)は、1853年生まれのスウェーデン人の画家で、スウェーデンの伝統的な田舎のイメージの作品を数多く残しました。ラーションは、名実ともにスウェーデンの代表的な画家だと言えます。そして彼は、特にスウェーデンの田舎の夏の絵を多く描きました。これらの絵は、スウェーデンの理想的な夏の雰囲気を完璧に表現していると思います。

先ほどから「理想的な田舎」、「理想的な夏」と書かせてもらっていますが、ではその「理想」とはなんでしょう?
それは、綺麗な自然、家族と友達と一緒の時間をたっぷり過ごせること、夏の食べ物(イチゴや、ブルーベリー、野菜、魚など)をたくさん食べられること…日生常活と現実から離れて十分に休養を取ることだと言えるのではないかなと思います。それが夏の理想的な過ごし方だと思いますが、スウェーデンの職場でもらえる有給が多かったとしても、さすがに夏の間中ずっとそんな過ごし方ができるわけではないですよね。しかし、夏至祭ならそんなに長くないので、理想的な夏のひと時を楽しむことができます!

夏至祭が終わって7月になれば、多くのスウェーデン人の夏休みが始まります。学生は大体6月から休みが始まりますが、社会人の多くは7月や8月に4週間ぐらい仕事から離れて休みに入ります。私は有給を春と秋に日本旅行に使っちゃう予定なので、この夏はずっと仕事をしていますが…。

6月には夏至祭以外にもPrideMonthの期間でもあります! PrideMonthは、LGBTQコミュニティーの問題を取り上げるなど、LGBTQコミュニティーの権利向上のためにいつもより精力的に活動に取り組む1か月です。ストックホルムのどこに行っても、レインボープライドの旗が掲げられています。とてもカラフルで、素敵です。パレードは7月や8月にあるので、6月だけというわけでもないです。街中がとてもにぎやかで楽しいです。テレビなどでも、LGBTQのテーマのドラマや番組も普段より放送されたりします。そしてもちろん、LGBTQコミューティーの権利なども話題になります。今年は特に、トランスジェンダーな方の問題と、LGBTQの難民の問題も話題になりました。

そして最後に、6月は高校生の卒業式シーズンでもありますね! スウェーデンで高校の卒業式はおそらく他の卒業式の時よりずっと重要なものであると思います。スウェーデンでは18歳になると法的にも成人とみなされ、お酒も飲めよるうなにります。そして、高校生はだいたい卒業するのは18歳か19歳です…なので、学生たちは卒業の日、朝の「シャンパン朝ごはん」から始まり、卒業式、クラスメイトとのお祝いと続き、そして午後に家族とのお祝いがあり…夜にまたクラスメイトや友達とのパーティーがあったとしても不思議なことではないです。学校ごとに卒業の日も違うので、お祝いごとで埋め尽くされる時期ですね。

夏至祭、PrideMonth、高校の卒業、そして何よりも夏の始まり…6月がスウェーデンでの一番素晴らしい1か月であると言って、それを否定する人はまずいないと思います。

(『ビョルク-白樺-』第158号、スウェーデン交流センター、2023年7月10日より転載)

ソフィア・ヤンベリ(Sofia Jernberg)
1993年ストックホルム生まれ。ストックホルム大学日本研究学科在学中の2013年に初来日。南山大学に留学後、帰国してストックホルム大学を卒業。 2016〜17年上智大学に留学。2018〜19年スウェーデン交流センター(北海道当別町)に勤務。現在、スウェーデンの特許法律事務所に勤務。『ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+』著者。


▼ぼくが小さなプライド・パレード 北欧スウェーデンのLGBT+

ぼくが小さなプライド・パレードの表紙イラスト

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