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第29回 断るほうが、お互いのためになります

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像
大学へ行くために、アルバイトをしてお金を貯めていました。事情があって別居中の母から、そのお金を貸してほしいと言われ、お母さんもたいへんだろうなと思って8万円貸しました。でも今また、貸してほしいと言われています。断りたい気持ちと、断れない気持ちといろいろあって悩んでいます。(めいぷる・18歳・女性)
断るほうが、お互いのためになります

親から子どもへの愛よりも、子どもから親への愛のほうが、はるかにまさると思うことがよくあります。小さい子どもが虐待を受けて亡くなる例がありますが、虐待する親をも、子どもは愛するのですから。

ご相談者さんのお悩みは、たいへんと思います。けれどもお母さんと別居されていることに、少しだけ安心しました。

一緒にお住まいであれば、互いにぶつかることも多いでしょう。距離をおいて、お母さんを客観的に見られることは、とても重要です。

ただ離れているからこそ、やさしい気持ちになって、お金を貸してあげたくなるのかな、と思います。

お母さんは、どうしてあなたにお金を借りなければならないのでしょうか。生活がどのように困窮しているのか、詳しく聞いてみてください。

また、あなたがこれまで何度もお母さんにお金を渡しているのであれば、お母さんとしては、あなたに頼ることが、くせになっているのかもしれません。

あなたは、あなたの人生を生きていく自由と責任を持っています。

あなたは今、未成年という立場から、社会的責任を負っていく立場に移ろうとしている、大切な時期にいます。学費のために貯金をすることは、ご自分の責任を果たそうとしているわけで、すばらしいことです。

一方、親は、子どもの行動を十分に尊重し、子どもの夢を応援する立場にいます。

子どもが、これから社会的責任を果たしていくための準備をしているのですから、現在の生活の責任を子どもに負わせるのは、間違っているでしょう。

助けは、社会全体に求めていかなければなりません。

たとえば、お母さんが何らかの事情で働けない場合は、行政から生活保護を受けることができるかもしれません。

さまざまな制度や人から助けを得て、お母さんはお母さんの人生を生きていくのです。そのことを、お母さんと向き合って、時間がかかってもいいのでよく話してください。

あなたがお母さんにお金を貸し続けると、あなたもお母さんも、社会的な存在という立場からはずれてしまうことになります。

家族で問題を抱え込むと、何もかも自分たちだけで対処しなければならないと思ってしまいます。

それではあなたもお母さんも、非自立的、非社会的な存在になってしまうのです。

社会は、助け合うためにあります。あなたがこうして私に相談してくださることも、人は社会の中で生きていること、人が社会をつくっていることをよく理解した、すばらしい行動なのです。

当面は、「貸せないよ、お母さん」、と繰り返し言う必要があるかもしれません。それでもお母さんがあなたを頼るようでしたら、あなた自身が信頼できる大人に相談して、その第三者にも入ってもらって、お母さんと話すことが必要になるかもしれません。

親は心の底では、子どもに助けを求めることは、したくないと思っています。とくに経済的な助けを求めることは、自分が親であることを放棄していると感じ、みじめになって、自己否定感をさらにつのらせることにもなります。

あなたが親を思いやり、お金を貸してあげたいと思う気持ちは、あなたを追いつめるだけでなく、お母さんをも追いつめていきます。

このことを、わかっていただけたらと思います。

むずかしく感じるかもしれませんが、断ることのほうが、お互いのためになるのです。

経済的な助けは公共の制度や仕組みを利用して、あなたもお母さんも借金の泥沼にくれぐれもはまらないように、社会的存在として生きられるように、励まし合っていってください。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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