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「第25回 国際協力、という仕事2」 少女のための”海外へ出ていく”話

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あこがれの仕事

  国際協力の仕事、と聞くと、どういうイメージがありますか? 国際機関の代表である国連、すなわち国際連合で働く、ということにあこがれておられる方もあるかもしれないですね。世界各国の人たちと、自分や同僚の出身国とは、また違うところで、国際的な協調と平和のための仕事を紡ぐ。あこがれるに値する仕事だと思います。
 国連職員になるためには、どうしたらいいのでしょうか。
 大きく分けてふたつあります。
 ひとつは、王道、とも言える方法で、日本で国家公務員試験を受け、国家公務員になり省庁で働き、そこから、国連に派遣される、という方法。もうひとつは、国家公務員を経ないで、自分で国連職員に応募する、という方法です。
 一つ目の方法は、王道、とは書いたものの、日本政府から何年か国連に派遣された後、また、日本の省庁に戻って働くわけですから、ずっと国連で働く、というわけではありません。ずっと国連で働きたいなら、二つ目の方法をとることになります。世界中に空席公募が出て、世界中の応募者から選考されます。日本では、外務省国際機関人事センターというところが窓口になって、国連のどういう組織からどういう人を求める公募が出ているか、を見ることができます。
 英語を読まねばなりませんが、国連で働きたいな、と思う人は、この国際機関人事センターのホームページをみていただけば、なんとなくこういうものか、という、イメージがわくか、と思います。どの仕事も数年の契約であり、終身雇用ではありませんから、国連職員であり続けたい人は、契約が終わる前に、別のポストに応募していく、ということになります。

 国連の旗が並ぶ風景

Photo by Mat Reding on Unsplash

「専門性」と「実務経験」

 国連職員になるためには、大学を出てすぐ、にはなれません。「専門性」と「実務経験」が必要だからです。
 大学には、ある程度の専門を決めて進学するわけで、多くの人は、大学を卒業すると、そこで、仕事に就きます。しかし、この国連などで問われる「専門性」というのは、大学を出ただけでは身につかない、とみなされることが多く、「専門」とは、大学を出た後の、大学院で学ぶもの、と、とらえれているのです。
 そういう意味では大学の学部は、どこでもかまいません。大学院に進む時に、「専門」は身につける、と思われているのです。国際機関人事センターの空席公募を見てもらえばわかるように、国連で必要とされる学歴はMaster、すなわち修士課程卒業以上、とされていることが多い。
 もう、お分かりかと思いますが、国際協力の代表的な仕事である国連職員になるには、何かの「専門家」でなければならず、その「専門性」は、大学で学ぶものではなく、大学院で身につけるもの、と考えてまちがいありません。
 「専門性」は大学院で身につけるのですが、もう一つ必要とされる「実務経験」のほうは、仕事を通じて得られるものです。
 国連職員になるための「実務経験」とは、文字通り、フィールド経験、すなわち、いままで開発途上国、と呼ばれるような国々で働いていた経験が重要視されます。なぜなら、国連の仕事は、そういう国に赴任する人を求めていることが多く、国際協力の仕事というのは、そういう国の状況をよくすることを目指しての赴任を前提としていることが多いからです。
 長期、つまりは、少なくとも数年にわたって、何度か、自らの専門とする分野で、開発途上国で働いた経験、を「実務経験」と考えることができるでしょう。

国連で働く日本人が少ない理由

 国連職員の数は、政府が国連に拠出しているお金によって、その国出身者の職員の数がだいたい決まると言われています。
 日本政府はかなりのお金を国連に拠出していますが、国連で働く日本人の数は、拠出額にくらべると、少ないので、日本人である、ということは国連の空席公募を受けるにあたって、ある程度有利である、と言えます。
 国連で働く日本人が少ない理由は、国連で働きたいと思う日本人がそれほどはいない、ということを意味していますが、それは、なんと言っても「語学ができない」からだと思います。国連の公用語は、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、です。まずは、英語、はできてあたりまえであり、もう一つできることが望ましい。そして、求められている語学のレベルは、あたりまえですが、とても高いものとなります。
 仕事をするための英語のレベルとは、自分が言いたいことが自在に言えることは当然で、相手のどのような癖のある英語も聞き取ることができ、厳しい議論の場で、相手の話をよく聞き、自らの意見を的確にまとめて話せること、分厚い書類を迅速に読解し、自分自身でまちがいのない文書をいくらでも書くことができること、が、最低限でしょうか。

壁に描かれた文字 LOVE TO LEARN

Photo by Tim Mossholder on Unsplash

 日本は、明治時代に外国の文化や文献に触れた先人たちが、豊かな翻訳文化の基礎を作ってくれたおかげで、諸外国で出版されるものが瞬く間に翻訳されることもあり、高等教育のすべてを日本語で受けることができますから、それほど高いレベルの英語を、日々の生活や仕事の上で要求されません。自国の言語のみでそれだけのことができるということは、それはそれですばらしいことなのですが、逆にいえば、日本で暮らして、勉強して、仕事をしていると、英語をはじめとする外国語の能力はそんなに鍛えられる機会がない、ということでもあります。この連載でも何度か話題にしていますが、留学する意味も、そこにあるでしょう。
 でも、同時に、国連職員になろうとするほどの語学力は、数年の留学だけではなかなか身につかないことも多く、やはり数年の「実務経験」が必要である、というのは、当然のことになります。
 日本語話者の国際機関への応募は、ですから、おのずとハードルが高くなり、応募者もそれほどいない、ということになってしまうので、日本政府は、JPO(Junior Professional Officer)派遣という制度を作って、将来国際機関で働きたいと思っている人を支援する制度を作っています。これは、35歳以下の日本人を2年間、各国にある国連機関の現場に送り込み、準職員として実務経験を積んでもらう、というもの。
 お給料は日本政府からもらうのですが、実際の仕事は、普通の職員と変わらず、こういう分野の仕事がどういうものであるかわかって積極的な実務経験となり、また、機関内部での人間関係もできるので、次の仕事につながっていきやすくなります。日本人で、国家公務員でない人で国連職員になっている人には、このJPO派遣制度を使ったことがある人が少なくありません。

35歳までに経験を積む

 国際協力の仕事の代表的なものとして、国連職員をあげて、説明しましたが、だいたいイメージがわいてきたでしょうか。
 求められるのは「専門性」と「実務経験」。そして実際問題としての「英語の語学力」。そしてその、専門性は、大学院で勉強し、実務経験を積む中で鍛えられるもの。
 だから、20代で国連職員になることはむずかしく、上記のJPO派遣制度自体も若くても20代後半から(そして35歳まで)の年齢層の人を対象にしています。国際機関、国際協力の場、で働くには、それなりの準備が必要なのですね。
 具体的にいうと、多いパターンは、大学を出て直接、あるいは数年、社会人経験を積んでから、青年海外協力隊、という国際協力事業団(JICA: Japan International Cooperation Agency)の派遣している有償ボランティア制度に応募して開発途上国での2年以上の経験を積み、海外の大学院で修士号を取り、さらに数年の海外での実務経験を積んでから、JPOに応募して国連での経験を数年積み、国際協力の分野の仕事をしていく人が多いと思います。
 「専門性」は、大学院でつけるもの、と言いました。私自身は、結果として国連の仕事はしていませんが、一貫して国際協力の仕事に携わる人生となりました。
 そして、「国際協力、という仕事1」の最後にふれたわたしの「専門」は、「公衆衛生」という分野です。一つの専門性の例として、「公衆衛生」の専門の勉強の仕方については、次に説明していくことにしましょう。

三砂ちづるプロフィール画像
三砂ちづる (みさご・ちづる)

 1958年山口県生まれ。兵庫県西宮育ち。津田塾大学国際関係学科教授、作家。京都薬科大学卒業、ロンドン大学Ph.D.(疫学)。著書に『オニババ化する女たち』、『昔の女性はできていた』、『月の小屋』、『女が女になること』、『女たちが、なにか、おかしい』、『死にゆく人のかたわらで』、『五感を育てるおむつなし育児』、『少女のための性の話』、訳書にフレイレ『被抑圧者の教育学』、共著に『家で生まれて家で死ぬ』他多数。
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