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「第18回 外国籍の人と結婚したら」 少女のための”海外へ出ていく”話

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結婚とは何か、考えてみる

 国籍の違う人と結婚すること。それが国際結婚です。結婚とは何か、というのは、そもそもそもなかなかに難しい定義ですが、基本的には男と女が(現代は同性婚も議論されるようになってきていますが)周囲の認知を得てともに生きていくこと、でしょうか。重なり合う金の指輪

 この「周囲の認知」ということには、いろいろな解釈もあると思います。宗教などの儀礼的な場で周囲に認めてもらう、地域でみんなに紹介して認めてもらう、などいろいろあるわけですが、現代の「結婚」は、公的な機関に届出を出して社会に認めてもらう、というスタイルが、いちばんよく知られている「結婚」ではないかと思います。日本の場合、地元の役所に行って婚姻届を出す、ということでしょう。
 最初から難しいことを書いていますが、要するに、「婚姻届を出す」という形で社会的に認知してもらうことを結婚、と、ここでは、一応言ってみます。
 婚姻届を出すと、日本では「同じ戸籍に入る」ということになります。
 結婚する前までは、男性も女性も多くの場合は家族の戸籍に入っています。
 結婚したら、どちらかの戸籍に入るか、新しく二人の戸籍を作ることになります。
 日本の場合、この戸籍、というシステムで国民みんなが認識されている、といいますか、管理されている、といいますか、人が生まれたら出生届を出し、学校に行ったり、医療保険や福祉のシステムにつなげられたり、証明書を発行してもらったり、パスポートがとれたり……など、日本国民として公的なサービスを利用する、基礎的な仕組みになっている。
 結婚したら 婚姻届を出し、誰かが死んだら、死亡届を出す。そういうしくみなのです。
 ところで、「戸籍」ってなんでしょう。あたりまえに身近にあるから、なんだかあってあたりまえ、と思っているかもしれませんが、戸籍制度は、世界中にあるわけではない、実は特殊な制度です。東アジアに特有の制度と言われていて、日本、韓国、中国などにあったのですが、韓国では近年廃止、中国、台湾にも存在すると言われていますが、形骸化しているところもあるとか。日本では、まだまだ現今の制度として機能していて、廃止されるようすはありません。
 日本の戸籍、という制度は天皇制と関連しても、いて、天皇家、皇族のみなさまは戸籍がないんですよ。苗字もない。宮様としてのお名前と、ご自身のお名前があるだけです。なぜそういうことになっているのでしょうね。ぜひみなさんには「戸籍」の由来とか歴史についても、詳しく勉強してもらいたいと思います。

日本で外国籍の人と結婚した場合

 ともあれ日本では、日本の国民でないと、戸籍に入れない、ということになっています。
 外国に住む日本人も住民登録はできますが、戸籍には、入れません。戸籍に入るためには、日本国籍を取得しなければならないのですが、それはなかなかに大変なプロセスであり、「日本人と結婚した」だけでは国籍を取得することはできません。ですから、あなたがもし外国籍の方と結婚することになり、市役所に婚姻届を出しても、あなたの配偶者になる外国籍の方は、戸籍には、入りません。あなたの戸籍には、あなたがこういう国のこういう名前の人と結婚しました、ということが記載されるだけなのです。
 配偶者は、戸籍には入れませんが、あなたと外国籍の配偶者の間に生まれた子どもは、あなたの子どもとしてあなたの戸籍に入ります。ということは、子どもは日本の国籍も取れます。あなたが結婚した相手は、戸籍にはいることはできませんが、日本人と結婚した、ということで、日本で生活したり、日本で働いたりできるようになります。
 日本のシステムは、戸籍制度を基礎として作られていますが、世界には、先述したように戸籍制度のない国が多い。あなた自身が外国の方と結婚して外国に住む、というときには、日本ではあまり知らなかったことも学んでいくことが必要になったりします。

子どもの国籍はどうなる?

 外国の方と結婚して生まれた子どもの国籍はどうなるのでしょうか。芝生の上で遊ぶ二人の子供

 子どもは父親と母親の両方の国籍を取ることができることが多いのですが、それは父親と母親が双方、自分の国の国籍を取る手続きをしないと、取れないことがほとんどです。
 また、国によっては両親ともにその国の出身者でなくても、子どもが生まれた、というだけで、その子どもが国籍を取れる国があります。生地国籍主義の国、というのですが、よく知られているのはアメリカ合衆国などですね。外国人でもアメリカで子どもを産むと、子どもはアメリカ国籍が取れるのです。
 たとえば、日本人とブラジル人のカップルの子どもがアメリカで生まれた場合、理論上は、その子どもは日本国籍とブラジル国籍と、生まれた国であるアメリカの国籍の3つを持つことができます。
 親には日本国籍またはブラジル国籍しかないけれど、生まれた子どもは、日本国籍とブラジル国籍とアメリカ国籍を持っている。つまり親は国籍は一つだけれど、生まれた子どもにはいくつも国籍がある、ということになります。
 子どもの頃はそうなっていても、成人した後には、国によって「一つの国籍しか認めない国」と、「複数の国籍を認めている国」があります。
 日本は、一つの国籍しか認めない、つまり、ある年齢(今は23歳)になった時点で二つ以上の国籍を持っている人で、日本の国籍を持ち続けたい人は、役所に行って、「日本国籍を選びます」という申請をしなければなりません。その時点でその人は、日本国籍を選んだ、ということになります。
 ということは、たとえば、上の例で挙げたような子どもは、日本の国籍を選んだ時点で、ブラジルの国籍とアメリカの国籍をやめなければならない、ということになりますが、事実上、一旦国籍を持っている人が国籍を離脱するという仕組みを持っていない国も、少なくない。たとえばアメリカもブラジルも、複数の国籍を持っている、ということを認めている国ですので、日本の国籍を選んだからと言って、これらの国の国籍を離脱する、という手続きは明確ではなかったりするようです。

奇跡のような出会いの果てに

 込み入った話ですね。どういうことかと言いますと、一旦、複数の国籍を得た人は、成人して、一つの国籍を選んでも、他の国籍をやめる、ということにはならないことも少なくない。結果として、親が国際結婚をしたり、生地国籍主義の国で子どもを産んだりすると、その子どもは大人になってから複数の国籍を持って生きていくことになることも、少なくない、ということです。自然の中で横に並んでいる子供たち

 自分とは違う文化の人と出会い、その人と結婚しようと思うほどに、親しくなること。それはそれだけで、すばらしいことだと思います。
 海外に出て行き(あるいは相手が海外からやってきて)、異なる国で生まれ、異なる言葉を話し、異なる環境で暮らしてきた人と出会う。そして互いに人生をともにしよう、という決意をする。それは、奇跡のような経験です。
 自分の慣れ親しんだ土地ではない、全く違った環境で生きていくこと。自分と違った文化で育った人と新しい生活を作っていくこと。それには大きな勇気がいるはずなのですが、結婚しようと思うくらい気持ちが盛り上がっている二人ならば、そんな環境の変化も越えていける、という自信が持てるものなのです。
 奇跡のような出会いの果てに、異なる文化の二人が家庭をつくり、子どもも生まれたりするわけです。今回ご紹介したように、自国の人と結婚した場合では、考えもつかないような制度の違いに驚くこともあるでしょう。
 そんな発見もまた、喜びをもって学んでいけるようになるといいな、と思います。

三砂ちづるプロフィール画像
三砂ちづる (みさご・ちづる)

 1958年山口県生まれ。兵庫県西宮育ち。津田塾大学国際関係学科教授、作家。京都薬科大学卒業、ロンドン大学Ph.D.(疫学)。著書に『オニババ化する女たち』、『昔の女性はできていた』、『月の小屋』、『女が女になること』、『女たちが、なにか、おかしい』、『死にゆく人のかたわらで』、『五感を育てるおむつなし育児』、『少女のための性の話』、訳書にフレイレ『被抑圧者の教育学』、共著に『家で生まれて家で死ぬ』他多数。
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