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「パスポートとビザ」 少女のための海外へ出ていく話

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命の次に大切なもの

 海外に行く話、ですから、まずは、持っていますか?パスポート。これがないと国外に出ることはできません。いったん日本の外に出たら、命の次に大事なパスポート。あなたの身分を保証し、あなたが本国以外であちこちにいくことを可能にしてくれるものです。海外に出たら、いつも肌身離さず持っていなければなりません。

飛行機とパスポート

 海外に引っ越してそこに住み始めたら、在住に関する証明書などを持って動くことになりますから、いつもパスポートを持つ必要はなくなり、帰国したり、その国からs外に出るときだけに持ち出すものになります。でも短期で海外に出ているときには(つまりは観光とか短期留学とか)、ずっと携帯しているべきものです。

 人によっては、ホテルの部屋にある鍵付きの金庫に保管して、パスポートをもたないで観光をする人もおられるようですが、私自身は短期でもいったん海外に出たら、パスポートは常に自分で持ち歩くようにしています。

 盗まれたら困る、とおっしゃる方もあるし、もちろん盗まれたらすごく困り、すぐに在外大使館に出向いてその旨を伝えて対処してもらわなければなりません。だからといって、短期滞在している海外で、パスポートはホテルなどに置いて出かけるのはリスクが大きすぎるように思います。なぜかと言うと何かあったとき、自分の身分を保証してくれるものはパスポートしかありませんから。

 私自身は、いったん海外に着いたら、旅行用グッズを売っているところなどで手に入る、ベルトのような薄型のウェストポーチにパスポートを入れて、肌着の上、つまりは、服の下につけて常に持ち歩いています。パスポートが入っていると見た目にわかるようなポーチだと、盗まれる可能性が高くなりますから、目立たないように身につけることをおすすめします。

意外な場所でのトラブル

 いったん海外に出たら、常に持っているべきパスポート。誰もが気をつけていると思いますが、パスポートのトラブルは意外にも、海外に出る前に起きることも多いのです。

空港では、まず航空会社のカウンターでチェックインするときにパスポートを見せ、荷物検査をするところで見せ、イミグレーションで出国手続きをするところで見せ、最終的に飛行機に乗る搭乗口でもパスポートの提示を求められますから、空港では常に手元のすぐ出せるところにパスポートを持っていなければなりません。空港でパスポートを持つ男性

 パスポートをなくすのはどこでだって、とても困ったことですが、実はなくしやすいスポットが、空港だったりします。

 若い友人は、10代後半で初めて海外に出たとき、頭ではパスポートに気をつけなければならない、ということがわかっていたというのですが、まだ国内にいたので安心していたのでしょうか、イミグレーションを出て、航空機のゲートに着くまでの間に、手に持っていたはずのパスポートを落としてしまった、というのです。

 航空機のゲートに着いて、パスポートがないことがわかり、真っ青になります。イミグレを出てパスポートをなくしたのでは、もちろん航空機に乗ることはできませんから、出発もできない、戻るにも戻れません。必死で今まで歩いてきたところを戻って免税売店などのあたりをうろうろしていたところ、むこうから空港係員の女性がパスポートらしきものを手に持って歩いてきたところにゆきあたり、「それは、私のパスポートですか!」と聞いて、無事、手元に戻ったそうです。

 「パスポートをよく出す」ところで、うっかり落としたりすることのないように気をつけなければいけないですね。友人はそれから本当に慎重に、パスポートのありかをいつも確認するようになった、と言います。

 ところで、あなたが家から持ち出したパスポートはあなたのものですか?

 必ず、あなた自身のものであることを確認しましょう。そんなこと当たり前でしょう、と思うかもしれませんが、「まちがってきょうだいのものを持ってきた」話は、けっこうあるのですよ。パスポートには5年有効のものと10年有効のものがありますが、20歳未満ではまだ10年有効のパスポートをとることはできません。5年間のパスポートしかとれないわけですが、幼い頃にとったパスポートの写真は、家族の誰だかよくわからなくて、親自身がまちがって、海外に出かける子どもではない子のパスポートを持って空港まで行ってしまった、という話も聞きました。エアラインのカウンターで子どもの名前を呼ばれて初めてパスポートが間違っていたことに気づき、あわてて家まで取りに帰ったと言います。

 必ず家から持ち出す前に、自分のものであることを確認しましょう。パスポートの期限も見ておいてくださいね。期限が半年残っていないと、入れない国もあります。

ビザの落とし穴

 この、海外に出たら命に次に大事なパスポート。これは、各国の政府が発行して、その国の外に出て行く人に、国籍と身分を証明している、という書類です。しかし、この書類だけでは外国に行くことができないことも多い。つまりは、パスポートは自分の国の身分証明ですが、行く先の国の「入国許可」つまりは「外国人たるあなたがその国に入ってもよい」という、入国許可書も必要で、それをビザ(査証)といいます。パスポートの査証

 入国許可書たるビザなしで渡航できる国もあり、もしあなたが日本のパスポートを取得していると、世界190カ国ほどにはビザなしで、ある程度の期間、入国が可能ですが、アフリカ諸国やロシア、インドなど、ビザが必要な国も少なくないのです。

 ビザを取るには、その国の大使館や領事館に連絡してどのような用事で渡航するのかを説明し必要な書類を書いて、お金を払い、パスポートにスタンプを押してもらったりパスポートに貼り付けるステッカーをもらったりして、渡航先のイミグレーションで見せなければなりません。その前に空港の航空会社カウンターでも、行き先の国のビザを持っているかどうかをチェックしますので、ビザがないと飛行機に乗せてもらえません。

 地球の裏ですが、日系移民も多いことでおなじみの国、ブラジルに渡航するにはどのような場合でもビザが必要です。

 ところが前回、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロでオリンピックを開催したときは、期間限定でビザがいらなくなった時期がありました。私の友人は、そのときにブラジルに行っていたのでなんとなくブラジルはビザがいらないような気になっていて、その次に渡航しようとしたとき、ビザ取得をすっかり忘れていました。空港に行って飛行機に乗ろうとしたら「ビザがないので乗れません」と言われて、すごすごと帰ってきて、何日もかけてビザを取り直したそうです。

 観光などで行くときには、カンボジアやタンザニアなど、空港でお金を払えばビザを発行してくれる国もあります。くれぐれも出かける前によく調べて、飛行機に乗せてもらえない、などということがないようにしましょう。

 渡航先として人気のあるアメリカはビザなしで90日間滞在できますが、「ビザ免除プログラム」であるESTAとよばれるシステムにあらかじめ登録しておく必要があります。

 これはインターネットで有料で登録できるのですが2年間で失効してしまいます。私自身はアメリカに行ったことはないものの、中南米に行く途中で乗り換えにアメリカの空港に立ち寄ることになるので、その時のためにESTAを持っている必要がありました。失効しているのに気づかず、航空会社のカウンターで失効を指摘され、その場で自分のパソコンで登録し直したこともありました。カナダやオーストラリアも同じようなシステムのようです。

 「海外に出て行く」ときに、とにかくまずすべきことはパスポートとビザのチェックです。海外に出てから気づくことはたくさんありますが、国を行き来するにはこういうシステムがあるということも、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

三砂ちづるプロフィール画像
三砂ちづる (みさご・ちづる)

 1958年山口県生まれ。兵庫県西宮育ち。津田塾大学国際関係学科教授、作家。京都薬科大学卒業、ロンドン大学Ph.D.(疫学)。著書に『オニババ化する女たち』、『昔の女性はできていた』、『月の小屋』、『女が女になること』、『女たちが、なにか、おかしい』、『死にゆく人のかたわらで』、『五感を育てるおむつなし育児』、『少女のための性の話』、訳書にフレイレ『被抑圧者の教育学』、共著に『家で生まれて家で死ぬ』他多数。
 

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