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第43回 すべての命は奇跡です

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像

障がいをもつ姪がいます。正直に言うと、はじめはその子を受け入れることをむずかしいと感じていました。けれど接するうちに姪が本当にかわいくなり、とても大切な存在になりました。ただ昨年末に自分が妊娠してから、障がいをもつ子を産んだらどうしよう、と不安を感じるようになりました。姪の子育てを必死にがんばっている姉(姪の母)にはとても相談できず、姪にもうしろめたく思うのですが、どうしていいかわかりません。(アロニア・30代・会社員)

すべての命は奇跡です

すべての命にとって、「生まれる」ということはその一点で、あまりに大きな奇跡です。

卵子と精子が一緒になってできた一個の受精卵が、果てしないほどの細胞分裂を繰り返し、一人の人間になる。それがどんなに大きなドラマであるか。

まずそのことを、感じ続けてほしいです。人間はこのドラマを10カ月の間、お腹の中で感じ続けることができます。

どんな赤ちゃんでも生まれてほしいよ、誕生という奇跡をともに担いたいよ、とすべての親が思えたら……。そう心から願って、私は娘の宇宙(うみ)を産みました。

その、奇跡の命が生まれてくるこの世界に、優生思想の厳しさや残酷さがあることは、私がいちばん深く知っていました。

ですから私は、駅にエレベーターをつけたり、介助のシステムを作ったり、たくさんの人と関係性を作ったりしてきました。それは、生きていてよい命と、そうでない命、というように、命に価値付けをする優生思想を越えるための、様々な準備でした。

優生思想が隅々までいきわたっている社会では、自分のことが自分でできない限り、幸せになれないことになっています。自分中心、自己責任の社会で、障がいをもつ人が幸せになれるはずは、ありません。

でも私は、自分中心の発想で争ったり奪い合ったり、自己責任を口実に人と関わらない社会ではなく、助け合い、分かち合い、関わり合う社会になれば、私たちも幸せになれるのではないか、と活動してきました。

私の娘は障がいをもっているからこそ、助け合い、分かち合い、関わり合う環境で育ち、いま幸せな人生を歩んでいると思います。

ご相談者が、不安を私に話してくれたことは、本当にうれしいことです。

そこで、もう一つ進めて、ご家族に、「障がいのある子を産むのが不安なの」と、素直な気持ちを話してみてほしいのです。何が不安の原因になっていると思いますか。自分の不安を語るときに、たくさんの涙が流れるのは当然ですから、たくさん泣きながら、お話してほしいのです。

涙は、傷ついた感情からの回復のプロセスです。子どもさんが産まれる前に、少しでもご自身のからだから、そうした感情を洗い流せるといいな、と心から思っています。人間には、哀しみを涙で癒やす力があるのですから。

泣くことをおそれないでください。どうぞ、姪っ子さんがかわいい気持ちにはまったくゆるぎはないのだけれど、だからと言って障がいを持つ子の子育てに助けのない社会に対して、不安を感じている、ということを、ご家族と話してください。できるなら抱き合って、号泣するのも素敵です。

障がいがない子どもを育てていてさえ、助けがないと感じる社会です。あなたが感じている不安は、あなたが差別的なのではなく、差別せざるを得ないような状況に、障がいをもつ子どもたちがおかれていることから、生まれているのです。

一方、行動できることもたくさんあります。行動のための第一歩を、まずたくさんの涙を流すことから、始めていただきたいなと思います。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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