ブログ

第27回 いやな気持ちにも耳をすまして

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像
屠殺(とさつ)されるときの動物の苦しみや、世界的な経済格差を知り、肉食に疑問をもちました。でもじつは肉が大好きで、つい食べてしまいます。友だちと外食するのも楽しいし、お弁当をつくるときもお肉は調理が簡単。ただ食べた後で、いやな気持ちになることもたしかです。問題を知らなかったときに戻ることもできない・・・でも、ベジタリアンにもなれません。いつも疑問を抱えて食事をするのもつらいです。どうしたらよいでしょうか。(亜麻の実・45歳・女性)
いやな気持ちにも耳をすまして

ミート・フリー・マンデイ(月曜日はお肉をやめよう)というキャンペーンをご存じでしょうか。ジョン・レノンがベジタリアンだったことは知られていますが、同じビートルズだったポール・マッカートニーが提唱しています。

彼はある日、自分の農場で、生まれたばかりの子羊たちが楽しそうに遊んでいるのをほほえましく見ていました。その日の食事はラム肉でした。農場の子羊たちと、食卓の上のラム肉が彼の中でつながりました。子羊たちも人生を楽しんでいる、自分たちは彼らの死体を食べている。そのことについて家族で話し合い、そしてポールは肉を食べるのをやめよう、と決めたそうです。

彼が制作した、肉食と環境問題に関するフィルムがYouTubeに上がっているので、見てみてください。

私たちは非常に、柔軟性を持っています。さまざまな状況に思いをはせて、自分にとっても人にとっても、そして人間以外の生き物にとっても、よい方向をめざすことができます。

おっしゃるとおり、肉を食べる前と、食べたあとの気持ちの違いを感じ続けることは、つらいことです。でもそれは、ほかの生物からの叫びを聞き取ろうとする、からだの声なのです。

私たちの社会は、いやな気持ちを感じないことが、正しいとされています。しかし、人の苦しみや、自分以外の動物の苦しみを自分のものとして感じるために、いやな気持ちにも耳をすまし、向き合ってみることも、大切なことだと思います。

問題は、動物がかわいそう、というだけではありません。飼料に使われる遺伝子組み換え作物、農薬や放射性物質など化学物質の生物濃縮により、動物たちのいのちも冒(おか)されています。

当然ながらそれを食べる人間の健康も、脅かされています。肉食の場合の心臓病、糖尿病、認知症のリスクは肉を食べない人の約2倍、大腸ガンのリスクは8.3倍とも言われています。

からだによくない習慣をやめようとするときは、何もいっぺんにやめなくてもよいのです。「やめたい」と思うことが大事なのです。そして悩み続ける自分を否定しないことが、肉をやめることへの早道であると考えます。

自分の気が弱いとか、自分の選択なのだから仕方がないと、自分を責めるだけで終わらせないでほしいな、と思います。基本的に悩みというのは、自分に責任を転嫁することで、解決したような気持ちになるものです。

しかし、この食べものの選択は、自分ひとりだけの問題ではありません。食糧問題に関しては、リーフレットや書籍、インターネットでもさまざまにリポートされています。ご相談者は、地球温暖化ガスの50%以上の原因が肉食にあることなど、肉を食べることの問題によく気づいていらっしゃる方と思いますので、ぜひもっと調べてみてください。

調べながら、いやな気持ちにもなるでしょう。でもそのいやな気持ちと闘いながら現実を知っていくうちに、週に二度買っていたお肉が、週に一度となるかもしれません。

最後に、私のエピソードを一つ。私も、牛乳もやめ、バターを買うのもやめていましたが、チーズだけはたまに購入していました。ところがビーガンの友だちから「1キロのチーズを作るのに、10キロの牛乳を使うんだよ。知ってた?」と言われ、その一言で、次の外食では豆乳チーズのグラタンを出すお店を探しあてました。チーズを買うのは一切やめました。

チーズばなれをするまでに、30年はかかっています。友だちの一言がなかったら、いまでも「まあ、チーズだけはいいか」と思っていたと思います。

牛のお母さんたちの、あまりに悲惨な現実があります。乳牛は、2年から6年くらいで屠殺され、肉用にされます。濃厚飼料を食べさせられるため、乳房炎などさまざまな病気にかかります。ご自分でも、調べてみてください。

ぜひ、肉食をやめていく仲間になってくれたらうれしいです。私たちには仲間が必要です。すべてのいのちと、手を取り合って生きましょう。(遊歩)

※第28回に続きます

*参考リンク
ポール・マッカートニー Meat Free Monday インタビュー
ミートフリーマンデー/お肉を減らす4つの理由
牛乳(ミルク)のウソ&ホント

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る
mitsui-publishing