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第21回 たいへんな状況からは、まず逃げること

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私は小さいころ、親にかわいがられた記憶が一切ありません。よく大声で怒鳴られたり、叩かれたりしていました。いま3歳のこどもがいますが、こどもが私の気に入らないことをするといらいらして、声を荒げたり、叩いたりすることがあります。こどもは私がいらだつタイミングを最近よくわかってきたようで、そんなときのこどもの態度に、さらに腹を立ててしまいます。こどもには、親の顔色を見ることなくのびのび育ってほしいのです。大声をあげたり叩くことをどうしたらやめられるか、具体的なアドバイスをお願いします。(カエデ・32歳・パート勤務)

たいへんな状況からは、まず逃げること

暴力をふるうことは、本当につらいと思います。子どもが親の気に入らないことをするときは、必ず理由があります。たとえば、寝不足で緊張している、うらやましさから兄弟をいじめてしまう、忙しい親をふりむかせようと知恵をはたらかせている……。さまざまな原因となる状況や、感情があるものです。

でも親だからと言って、そうしたこどもの心の動きをいつもわかってあげられるわけではありません。わかってあげられないことを責める必要も、まったくありません。

暴力を止める具体的な方法は、もし手をあげたくなったら、急いで子どものそばから離れることです。ぷんぷんした顔でも、いらいらした態度のままでもかまいません。まず立ち上がって、その場を離れてください。

そして、たとえば家の中だったら、トイレに行って子どもに聞こえないように水をジャージャー流しながら、罵倒の言葉をはき出してください。いったん家の外に出るのもいいでしょう。それでも止められなければ、何かものを叩いたり、ハンカチを引きちぎったりして、怒りのエネルギーを出しきってください。

とにかく子どもを叩かないこと。それが、いちばん重要なことです。

こどもに対しては事前に、説明しておいてください。こどもは1歳でもよくわかっているもので、3歳でしたら十分わかってくれますから、こんなふうに伝えてみてください。

「お母さんは、大きな声で怒鳴ったり、叩いたりしたくないのだけれど、今までそれを何回もあなたにしてしまったよね。本当にごめんなさい。あなたはちっともわるくありません。大声を出すお母さんも、叩くお母さんも、好きでいてくれてありがとう。

お母さんは、かわいいあなたを傷つけたくないと思っているの。だから、これから怒鳴ったり、叩きたくなったら、トイレに行ったりお外に出たりします。あなたから離れて、本当はそんなことしたくない、と自分で気づける時間をとりたいと思うの。

だから、急にあなたのそばを離れることがあっても、あなたのせいじゃないのよ。お母さんがあなたと、お母さん自身に対しても、やさしくしようとがんばっている時間だな、と思って待っていてほしいの。

必ずお母さんは元気になって、やさしくなってすぐに戻ってくるよ。がんばるからね。これからは、大きな声をあげたり、叩かないよう、この方法でがんばります。よろしくお願いします」。そう話して、ぺこりと頭を下げてください。

私たち親は、子どもと対等な、いい関係を作りたいと心から願っています。大きな声を出したり叩いたりすることは、そのいい関係をぶちこわしにしてしまうこと。それは、大人もこどもも、お互いにわかっているのです。

だから「よろしくお願いします」とあなたが頭を下げたならば、それまであなたに対して、こどもがどんな思いをもってきたかによって少しは違うこともありますが、心の奥の奥では「わかったよ、お母さん」と、肩を叩いてくれているにちがいありません。

こどもに暴力をふるう前に、逃げること。その状況から逃げていいことを、よくよく覚えて、実践してみてください。

たいへんな状況から逃げることは、わるいことではまったくありません。たいへんな状況下でいのちを守るためにできる最初の一歩は、まず逃げることだと、私は思います。

お子さんがもう少し大きくなったら、「お母さんもこどものときに大きな声でしかられたり叩かれたことがいっぱいあったんだ。そのときに、絶対、叩かないお母さんになろうと思ったの。だからがんばるよ」と話すことができたら、ますますすてきな関係になるでしょう。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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