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第19回 不安やおそれを具体化してみましょう

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像
年々、真剣になることを面倒に感じます。やりたいことがあってもあきらめてしまい、できなかったことを後で思い返して、年齢のせいにします。自分に自信がもてず、何もしたくなくなることもあります。このままでは毎日が風のように流れてしまう、という危機感と、独身でいることのこわさ、また万一家庭を持ったときのこわさもあります。若き日の「未来への希望」が、今は「将来へのおそれ」に変化してしまいました。こんな自分と付き合ってゆくよいアドバイスをお願いします。(カナヘビ・36歳・販売)
不安やおそれを具体化してみましょう

私も若いときは、自分のおそれや不安を具体化することがむずかしいと感じていました。一つ一つ見ていけば見ていくほど、不安やおそれがさらに強まるだろうと感じて、なるべく見ないようにさえしていました。

しかし、私たちの生きている時間の流れは、具体的なことの積み重ねなのです。

私たちの身体はどの瞬間も呼吸を止めず、心臓は鼓動を打つことをやめず、外に目を向ければ、毎日日は昇り、日は落ちていきます。そうした瞬間瞬間の積み重ねが、私たちが生きていることなのだ、と私は思っています。

最近私は、自分の家の窓から小さくですが朝日が見えることに気づきました。少しなだらかな丘の上に昇ってくる朝日を見て、幸せだな、とか今日もがんばるぞ、と口にしたり、たまには拝むこともあります。

もちろん、多様性を認めない社会や貧困、原発や政治のことを考えれば、おそれや不安、混乱を常に感じます。しかし私にとって大事なことは、その感じることを曖昧にしないこと。瞬間瞬間に不安を感じる自分、その不安について考えたりする自分を愛おしみ、よしとすること。そうしたプロセスを大切にしています。

私は障がいを持つゆえに、独身時代、結婚ができないだろうというまなざしを向けられることが強烈にいやでした。そしてその視線を覆せば、つまり結婚すれば、幸せになると思い込んでいました。結婚してもいいよ、と言ってくれた人と同棲しましたが、彼の家族は強烈に反対しました。家事や育児のできない女は妻でもなく嫁でもない、と言われ、制度としての結婚のひどさに気づきました。

次の恋人とは「10年は結婚しなくてもいいから仲良く付き合おう」と話し合い、社会的には独身ながら安定した関係が続きました。しかし彼がほかの女性を好きになり別れ話を切り出され、悲しみとパニックの日々を生きました。泣き暮らして半年が過ぎたころ、20年近く男性依存だった自分に気づき、3年間は独身でいようと決めました。

こうした経験の中で、不安やおそれを涙や笑いにして外に出してしまおうとする、私たちのからだの力に感動し、感謝しました。

ご質問へのお答えとしては、不安やおそれをとにかく具体化、言語化してみることをおすすめします。昔の失恋の痛手が癒えていないために独身が不安なのか、あるいは結婚の不安はよいモデルがないためなのか、それとも経済的なご事情なのでしょうか。

私たちの受けた教育は、観察力と想像力をひどく損なうものです。自分で考えることに無力感を持たされ、あるいは自分で考えるとはどういうことか、それさえわからない状況が多いと思います。

どうぞ、大切な大切なご自分の人生です。不安やおそれの具体的な理由を問い、言語化し、そして向き合い、考える力を発揮していきましょう。常に呼吸し鼓動し続けているからだに感謝しながら、不安やおそれを見つめ、考えながら生き続けていきましょう。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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