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第17回 幸福のあり方は、多様でいいのです

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像
娘を出産直後に夫が事故で他界しました。それから「自分がしっかりしなくては」と生活し、娘は17歳になりました。私はやりがいのある仕事に就き、周りの方にも恵まれ、充実した人生を送っています。ただ、夫が亡くなってから誰かに恋愛感情を抱くことがほとんどなく、それを不自然とも思いません。喪の過程はひとつひとつ進め、夫は自分の中の“特別な温かい場所”にいると思っていますが、最近、「(恋愛感情を持たない)自分には重大な何かが欠けているのでは?」という考えが浮かぶようになりました。今後どのように歩んでいけばよいか、アドバイスをお願いします。(おがわ・45歳・嘱託職員)
幸福のあり方は、多様でいいのです

お子さんを産んですぐにお連れ合いを亡くされたとのこと、そのときの悲しみやがんばりは、いかばかりのものであったろう、とお察しし、心から尊敬の気持ちがわいてきました。

この社会はシングルマザーに、政治的には公平性がまったくなく、周りの人びとのまなざしも時には非常に厳しいものです。お子さんが小さいころにはどれほどの奮闘があったことでしょう。繰り返しますが、いわゆる女手一つでここまでこられたことに、何度も何度も自分をほめて、自分に感謝してください。

私はむしろ、そんな充実感を持っておられる方でさえ、なにか足りないものがあるはずだと責め立てられるように感じるこの社会に愕然とします。ここでは、そうした考えがなぜ出てくるのかについて、考えてみたいと思います。

私たちは毎日毎日幸せになりたくて、なろうとして生きています。それは憲法第13条でも保障されている幸福追求権として当たり前のことです。しかし、私たちの住む社会では、多様であっていいはずの幸福のありようが、画一化され、規定されていることも残念ながら事実です。

お悩みを読んで、強制異性愛社会という言葉がすぐに思い浮かびました。男と女は恋愛するのが当然、という圧力下にある社会のことです。その恋愛観のみでお答えすれば、結婚相談所に行ってみるのはどうでしょうか、という回答になってしまうかもしれません。

しかし恋愛は、本来自由なものです。強制異性愛社会に対する語は、自由恋愛社会と言えるでしょう。自分の本当の幸福を追求する過程で、人に出会い、その人とのつながりから回復の道をたどることもあります。つまり本当の自由な恋愛には、もっと広い意味での愛があるはずだと思うのです。

お嬢さんとご自身の生活に不安がないのであれば、どうぞその安定や幸せを、あのときのご自分のような方たちに、ぜひ分けてあげてください。あのつらい時代を生き抜いた知恵や、人との関係を、大いに分かち合ってほしいと思います。

苦しみ、追い詰められているさまざまな状況にいる方たちと、ご自身の幸福――充実感やあきらめない心――を分かち合ってください。そこにはまた新たな、思いがけないすばらしい出会いがあるのではないでしょうか。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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