ブログ

第16回 男の子も、積極的に泣いていいのです

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像
男の子は泣くなと言われてきましたが、なぜ泣いてはいけないのでしょうか、と高校生の時にネットの質問サイトに投稿したことがありました。そのときの回答は、他の人の迷惑になるからとか、あまり自分の納得いくものではありませんでした。男性は、どうして泣いてはいけないんでしょうか。(オレンジ・24歳・男性)
男の子も、積極的に泣いていいのです

なぜなら、男の子は兵士となるようにこの社会から要請されているので、泣いてはいけないのです。この社会には、受験戦争とか、企業戦士という表現が浸透していますよね。

最大の暴力である戦争の中でも、男性は常に泣いてはいけないと、外からも内からも思わされています。そして争い闘うためには、泣いている時間はもったいないとされ、泣くことは絶対に禁止されます。でもその裏の真実は、泣くことによって人間性が回復することを恐れている。だから禁止するのです。

小さな子をみているとよくわかりますが、子どもは好奇心のかたまりです。生き生きとした冒険心で毎日を過ごし、うまくいかないことがあると、すぐに泣きます。泣いた子どもがもう笑ったとよく言いますが、必要なだけ泣くと、また生きることへの躍動を取り戻します。

小さいときは、さほど男女の別なく泣くことができます。しかし、男の子は次第に、悔しいことに泣くのならまだ許されるけれど、悲しみで泣いてはいけないという社会からのメッセージに追い詰められます。女の子は反対に、悲しみはまだ許されるけれど、悔しさや怒りで泣いてはいけないと言われます。

つまり男の子が泣いてはいけない、とされるのは、単なる悪習であり、人々を追い詰める完全に間違った常識です。本当は、男の子も女の子も、そして女性も男性も、泣きたいときは十分に泣いて、涙の後にある、明晰な思考力を取り戻す必要があります。

ニュージーランド人の友だちから、サド・アタックという言葉を聞きました。突然悲しみの感情がわき起こって泣きたくなったり、とんでもない無力感におそわれるのだそうです。彼はパートナーを亡くし、頻繁に起きるサド・アタックに苦しんでいました。

本来は、愛しい人が亡くなったときは悲しみを十分に感じたほうがいいのです。しかし男性は、女性よりも悲しむ時間を持つことが許されない。だからサド・アタックがしょっちゅう起こるんだ、と彼は言っていました。

もちろん女性にもそういうことがあるとは思います。しかし男性のほうが、泣いてはいけないという悪習を内面化しているために、サド・アタックのような症状が出るのではないか、彼と話し込んだものです。

男の子も、もちろん泣いていいのです。この社会を平和にしようと思うのであれば、積極的に泣いたほうがいいとさえ、私は思っています。さまざまな常識を疑い、新しい世界を作っていくくらいの気持ちで、創造性をもって、生きていきましょう。(遊歩)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る
mitsui-publishing