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第13回 悲しみをがまんしないで

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像

大切な人が亡くなったとき、どうやってわりきっていけばいいのかわからなくて、悩んでいます。これから大切な人とお別れする機会がどんどん増えていくのかなと思うと、不安になります。(ルピナス・25歳・女性)

悲しみをがまんしないで

悲しみをわりきらなくてはならない、悲しんではいけない、と思うのはなぜでしょうか。

どの別れもつらいし、悲しいものです。そのつらさ、悲しさを、いっぱい感じていいと私は思います。そして、つらく悲しい思いをしっかり感じれば感じるほど、生きる力が湧いてくると思います。

たとえば、食べものをおいしいと感じること。よくわかった、という学びの充実感を得ること。自分のからだの限界に挑戦し、達成感を得ること。どれも、感じる力です。

しかしとくに悲しみについては、あまりにも多くの場で、感じてはならないとされています。しかしそれは、間違いだと心から思います。

という話をすると、「のべつまくなしに悲しみを感じていたらつらすぎるし、日常生活が送れない」と言われることがあります。もちろん、それはもっともです。

以前、大好きな恋人と別れたとき、悲しくて悲しくて、泣きすぎて死んでしまうと思ったことがありました。そのとき私は、一日に一時間や二時間と決めて、思いきり悲しむ時間をとることにしました。毎日、バスタオル(フェイスタオルではありません!)がびしょびしょになるほど泣きました。

そのうち、一日でも泣くのをがまんすると次の日がつらいことがわかり、泣く時間を毎日とるようにしました。泣いたあとは、なんとか日常を送ることができました。

半年後には、ああもうこのことで泣かなくてもいいんだ、と心から思えるようになりました。大好きだった彼に連絡することも一切なくなり、それから二年ほど経って新しい出会いがあり、娘が生まれました。

大好きな親たちもふたり、見送りました。いまでも時々つらくなると――どうしてつらいのかわからなくても――母から聞かされた、母の貧しいこども時代のことを思い出して、また戦争に行った父がそこでなにをしたのか、させられたのかを想像して、泣きます。そうした思いをだれかに聞いてもらって、たくさん泣くようにします。すると、あのつらかった感じがずいぶん消え去り、また人に出会おうとする力がわいてきます。

障がいを持つだいじな友だちも、たくさん亡くなりました。40歳を過ぎたころに死別した人を数えたら、50人を超えていました。それから20年を経て、いまは100人近くになります。

死別でないにしても、そもそも私は人と出会う機会が多いので、その分、別れも数多く経験しています。亡くなった人も、生きながら別れた人も、すべてが私の大切な記憶であり、財産です。

別離のつらさも、感謝と、ときによろこびに変わっていきます。それがわかるまで、出会いと別れを重ねて、感じてください。

人との出会いと別れを感じることこそが、豊かな人生なのではないでしょうか。

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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