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第10回 あなたはすてきだよ、と何度も伝えて

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像

3歳の甥っ子は髪の毛の癖がとても強く、児童館などに行くと年上の子に「気持ち悪い髪の毛!」と頭を叩かれたりすることがあると、母である私の妹から聞きました。甥っ子が「ママと僕の髪は一緒?」と聞いている場面に遭遇し、直毛の妹は「一緒だよ!」と答えていましたが、甥も妹も、心の傷を負っているのだろうと胸が痛みます。日本では、人と少し違うというだけで差別されることが多いように思うのですが、差別されたときにどう対処すればよいか、また、周りの者はどのようなサポートができるのか、アドバイスいただけるとうれしいです。(叔母・30歳・フリーター)

私たちは、画一的な美意識や価値観を、この社会からおしつけられています。それは、からだの個性についても、言えることです。まずは一人一人が、さまざまであるはずの個性というものを、どんなふうに感じているのか、自分自身で見つめてみることが、大切かと思います。

ユニークフェイスというグループがあります。顔にやけどのあとがあったり、人と違う位置に目鼻があったりする人の、当事者グループです。そのことで、いじめられ、さまざまな差別を受けてきた人たちです。彼らの話を聞くと、多様性がすばらしいと思っている自分もまた、ときには心の奥で、多様性に違和感をもつこともあります。

つまり私は、多様性を認め合いたいと思いながら、同時に、この社会の優生思想(多数の人と違う人たち、とくに障がいをもつ人たちを排除してきた考え方)に激しく飲み込まれていることを知ります。多様性を認め、人と対等に楽しく暮らすためには、子どものときから、お互いに言いたいことを言い合う関係性をつくること、そして、正しい情報を伝えてくれる大人たちが、身近にいることも必要です。

学校教育は多様な個性を認めるどころか、バラバラに分けて教育しようとする、分離教育が中心となっています。これについては別に語りたいと思いますが、甥っ子さんに投げかけられた言葉は、こうした分離教育が背景にあるということを、知っておいてください。

そのうえで甥っ子さんに伝えてほしいのは、たとえばこうした言葉です。「○○ちゃんの髪の毛って、ほんとうにすてきだよね。お母さんのまっすぐな髪の毛もすてきだし、○○ちゃんのふわふわとカールしている髪の毛もすてき」。たぶん彼は、児童館で言われた言葉をすぐに思い出し、「そんなことない、ぼくの髪の毛、変なんだ」、などと言うかもしれません。そのときはチャンスです。「どうしてそう思うの」、と聞いてあげてください。

彼が、自分に向けられたいやな言葉を次々とおしえてくれたら、焦らないで、聞いてあげてください。やさしく、「そうかあ」と言葉を返して、からだにふれてあげてください。彼が話し終わったら、まっすぐに目を見て、「○○ちゃんの髪の毛は、ほんとうにすてきだよ」と、繰り返し、伝えてください。

そしてもうひとつ、今度いやなことを言われたら、「そういうことは言ってほしくない」というあなたの気持ちを、相手に伝えていいんだよ、と、言ってください。

いやなことを言われても、あなたにはそれを止めさせる力があること、そして、どの人も、それぞれが個性的ですてきなからだなんだよ、ということ。このふたつのことを、ゆっくりと焦らないで、伝えてください。(遊歩)

 

小さい若い人たちは、自分と人との違いに敏感です。

私が小学校に入ったとき、多くの同級生は、毎日のように「小さーい!」「なんで車椅子に乗っているの?」と聞いてきましたし、中には「変なの」と言ってくる子もいました。当時の私はそれがショックでした。説明しても何回も聞かれるものですから、母に助けを求め、母が学校に来てくれて、みんなに説明してくれました。小さい子たちは同じ歳だった私の言うことより、大人の説明のほうに、納得したようです。

私の場合、ネガティブな言葉が多かったわけではないので、差別だと感じたことはありませんでした。それでもなんだか嬉しくない気持ちになったのを覚えています。

でも、そこから自己否定感につながるわけではなく、自分は自分でいいな〜って思う気持ちは根本的には変わってきませんでした。それは、母が言っているように、周りの大人たちが「あなたはすてきだよ」と、繰り返し言い続けてくれたおかげだと思います。

子どもは、まわりで起こっていることを真似しながら、成長していきます。だから、「気持ち悪い髪の毛」という年上の子も、何かしら言われてきたのかもしれません。もしかしたら、本当は甥っ子さんの髪の毛を嫌だと思っているわけではなく、たまたま彼に八つ当たりしてしまったのかもしれません。それらを、甥っ子さんに話すのもいいかと思います。

だからといって、嫌なことを言われるのを我慢する必要はありません。言われていること、叩かれることが嫌だということを伝えるために、いろんな視点を持つのは重要なことだと思います。

いちばん大切なのは、まだ3歳だから、難しいことは理解できないと思わないで、丁寧に話して、一緒に考えてみることです。甥っ子さんの気持ちに寄り添ってあげてください。(宇宙)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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