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第8回 助けを求めることも、前向きなあり方です

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像

私は先天性の四肢奇形という、障がいがあります。普段の生活や職場では人の介助なく生きていけます。しかしこの1年は、事務職の仕事をメンタル疾病のため休職していました。今やっと、不安や不眠等の症状が落ち着き、薬も飲まずに過ごせるようになりましたが、今後、どうして生きていったらよいのか、迷いが生じてきています。

これまで「人のお世話になっているのを実感していない」「障がい者らしく、身分をわきまえていない」という周りからの言葉などで、傷ついてきました。障がい者らしく、と言われても、どうふるまってよいのかわかりません。ただ漠然と不安だけが募っています。前向きに生きていくには、どういう心がまえで生きていけばよいのでしょうか?(そら・44歳・会社員)

助けを求めることも、前向きなあり方です

1年間ゆっくりして、傷ついた心をほっこりと少しずつ温められたのでしょうね。まずこの1年間の日々を、よかったなと、読みながら私は思いました。

人はあまりにつらいと、つらいということにすら、気づかないものです。そのために不眠や不安がおこっているにもかかわらず、それをまた薬でおさえこもうとしてしまいます。ですから薬をやめられたことも、すばらしい回復力だと、ご自分をいっぱいほめてください。いっぱいご自分を抱きしめてください。本当に、よくやりました。

まず前向きに、ということですが、ここに書いてくださった時点で、すでにしっかりと前を向いていらっしゃるということを、お伝えしたいと思います。すばらしくよく生きてこられたし、人と違ったご自身のからだに対しても、ひどい差別の中、あきらめることなく、立ち続けてきてくれました。ありがとう。

もし可能なら、これからしてほしいことは、二つあります。一つ目は、障がいについて、顔を見合って、ときに手を取りながら、いっぱい話せる同じような障がいをもつ仲間を作ってほしいと思います。仲間がもうすでにいらっしゃれば、その方たちとのさらなる深い関係性を作られるよう、おすすめしたいです。

もし仲間がいらっしゃらなければ、まずは一人からでも、さまざまに調べて、出会ってください。全国に、当事者による当事者組織の自立生活センターというところがあります。「全国自立生活センター協議会」、あるいは略称「JIL」で検索して、ぜひ、ご自分の地元の自立生活センターにつながってみてください。そして、障がいをもつ仲間を紹介してもらったり、そのセンターで働いている、障がいをもつスタッフとつながってみてください。

そして二つ目は、自分の好きなこと、やりたいことを見つけ、知ってください。それをどんなかたちでも、少しずつでもやり続けることができたら、すてきだと思います。たとえば大好きな木を見つけて、その木にハグすることを習慣にするとか、いわゆる瞑想をするとか。私自身は、人に会いにいくことが好きなので、それをし続けています。どんなことでもいいのです。

私は、障がいをもつ人は、この社会がどんなふうにあったらいいかを、指し示してくれている、大切な人たちだと思っています。たくさん仕事をして、たくさん稼いで、たくさん消費する生き方ではなく、大好きな人たちと、好きなことを少しして、ゆっくり暮らすことは、この地球全体を壊しかねないスピードで進む環境破壊を、止めてくれるでしょう。そのために必要な社会からの福祉のサポート、生活保護や、年金を受ける方法もあります。ただ、そうすると決めたら、私たちの側が、どれだけ福祉を使いこなせるかが問題で、権利意識をもつことが重要です。そのための学びと応援者づくりも、これからの時間の過ごし方に付け加えられるよう、おすすめします。

また、介助はいらないと緊張して立つのでなく、必要な介助には来てもらおうと思うくらい、助けを求めることができれば、それは一つの前向きなあり方です。

本当の強さ、前向きさとは、助けが必要なときに助けを求められることです。あなたが今回そうしてくださったように。(遊歩)

 

本当に心のない発言をする人が多いですね。よく立ち直られたと思います。

今の社会は、なんでも一人でできるのがよいとされています。そんな中で障がいを持って生まれてくると、いつでも人の手を借りて生きる必要があるのと同時に、助け合って生きていっていいと、身をもって証明できる存在になることができます。だから、「障がい者らしく」と言われたならば、障がい者らしくもっと周りに助けを求めて、生きていっていいのではないのでしょうか。

私は、先のことを考えて不安になることがあまりありません。

それはなぜだろうと考えてみたところ、私の前に、たくさんの障がいを持った人たちが、本当に命と人生をかけて、自らが尊厳を持って生きるために闘ってきたことを知っているからだと思いました。私の母も、そうした障がい者運動の中で、前線に立って闘ってきた人でした。そのおかげで、私は小さい頃から守られて、自分で闘うことは今までありません。だから、今まで闘ってこられた方々の足元にも及びませんが、でも、これからは私も闘うことが必要になってくるかもしれません。社会全体が、私たちの存在を否定してかかってくることもあるかもしれないけれど、そんな中でも、闘い抜いた人たちがいるからこそ、今生きていけるんだなと、日々どこかで感じています。

また、重度の障がいを持ちながら、周りの人に声をかけながら日本を回ったり、家を飛び出して自立していった人たちの話も聞いてきました。どんな障がいがあろうとも、自分のやりたいことや、自分の想像するベストの生活を目指して生きている人たちの存在は、いつも私を励ましてくれます。

私は、いざとなれば、どんな風にでも生きていけるし、誰もが、まず生きていることが大切なんだと思っています。

最後に、「人のお世話になっているのを実感していない」という言葉には、「私も誰かに助けてもらいたい」、という思いが込められているのではないでしょうか。だから、「あなたも誰かに、私にでも頼っていいんだよ」って答えてあげてもいいと思います。(宇宙)

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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