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第3回 「あなたが自分自身の手で探せるんだよ」と伝えて

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遊歩と宇宙の「自分がきらい」から「自分がすき」になる相談室画像

精神科の薬剤を長期間、多種類、服用されていた娘さん(40代女性)と、ご両親(70代)から相談を受けています。娘さんには服用当初にはなかった、幻聴、アカシジア(静座不能症)、不眠、興奮などの悪化症状が現れ、断薬後5年たった今も、後遺症に苦しんでいます。
ご両親と娘さんの3人で暮らしておられますが、娘さんが時として暴言、暴力をふるうこともあるそうです。ご家族だけでは、もう限界にきておられるので、なんとか、いい療養施設のようなものがないものでしょうか?(ルナ・50歳・元薬剤師)

「あなたが自分自身の手で探せるんだよ」と伝えて

いずれも療養施設とは紹介されていませんが、以下の3つは、私が自分自身で訪問したところです。

北海道の浦河町にある、べてるの家をご存じでしょうか。ここは、当事者同士がピア(仲間)となって、お互いをサポートし合う場所です。生活の形態はグループホームや一人暮らしなどいろいろで、自分のありようを否定することなくそのまま認めて、当事者同士が助け合いながら暮らしています。たくさん本も出ているので、一度読んでみてください。

また、富士山の麓にある木の花ファミリーをご存じでしょうか。ごはんのおいしさにとても感動しました。ほぼ100%に近く食べものを自給していて、100人近い人々が暮らしています。そこの生活を気に入った人がメンバーとなっているのですが、ケア滞在を希望する人には、自然療法プログラムも提供されているようです。ホームページがあるので、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

また埼玉に、おにっこハウスというNPO法人があります。ここでは、多様な個性をもつ仲間たちが、味噌造りや養鶏を中心に集まり、働くことを通してお互いにサポートし合い、いきいきと生活しています。グループホームに入所し、そこから味噌造りや、カフェなどの仕事に少しずつかかわっていくということも、不可能ではないと思います。ケア滞在のプログラムはないので、娘さんが自分でどんなふうに生活したいか、展望をもたないとむずかしい場所かもしれませんが、様々な場所を見て歩かれたらいいのではないでしょうか。

以上3つをご紹介しましたが、問題は、40代の女性が、親の庇護なくして生活できないという状況だと思われます。断薬をしても、身体が回復しないことの中には、お互いへの精神的な依存もあるのではないでしょうか。親から当然旅立ちたいと思う年齢を超えて、親と一緒に暮らしてしまったことの習慣が、まず支配的にあります。その上に、薬という化学薬品の不自然な影響が、身体に表れているのではないでしょうか。

相談者の方が療養施設を紹介するというよりは、娘さんが自分で親元を離れて暮らしてみよう、と、まずは思えるように、エンパワメントしてあげてください。そしてもし、上に紹介した場所を娘さんが訪ねたいと思われたら、娘さんがご自身で検索し、自ら電話をかけるなりお手紙を出すなりしてみてください、と、相談者さんが娘さんをエンパワメントしてください。

自分にとってどんな状況が楽なのかは、本人にしかわかりません。情報は提供するけれど、あなたが自分自身の手で探せるんだよ、という立場でそばにいることが、大切です。

私たちはともすると、主体的であってほしいと願いながら、その主体性を根こそぎ奪ってしまうことが、多々あります。もしご両親がいっぱいいっぱいなら、ご両親に対して、娘さんと離れて暮らす時間をとってもいいのですよ、とお伝えすることも、よいかと思います。

また慎重であることは必要ですが、ご両親の心配が相談者さんに移りませんように、娘さんを信頼する立場に立って、お付き合いを続けてください。

安積遊歩(あさか・ゆうほ)
1956年福島県福島市生まれ。生後40日目で骨形成不全症と診断される。22歳で親元から自立。 1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。 障がいをもつ人の自立をサポートする。2011年まで、再評価カウンセリングの日本地域照会者。 1996年に40歳で愛娘・宇宙を出産。優生思想の撤廃や、子育て、障害を持つ人の自立生活運動など、様々な分野で当事者として、からだに優しい生活のあり方を求める発言を続ける。 著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』、共著に『女に選ばれる男たち』など。

安積宇宙(あさか・うみ)
1996年東京都生まれ。安積遊歩の娘。母の体の特徴を受け継ぎ、生まれつき骨が弱く車いすを使って生活している。 小学校2年生から学校に行かないことを決め、父が運営していたフリースクールに通う。ニュージーランドのオタゴ大学在学中。

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