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9.102026
11トントラックの運転席から生まれた詩集 ――第59回小熊秀雄賞『光る轍』
「社会的に低く見られがちな運転手の仕事の一端を、拙詩を通じて知っていただけたことは大きな励みです」
第59回小熊秀雄賞を受賞した直後、著者の生駒孝子さんはそうコメントしました。
トラックドライバーとして32年、働き続けてきた矜持が込められた言葉でした。
生駒さんは静岡県浜松市生まれ。高校を卒業後、結婚、出産。バブル崩壊で夫の工場も打撃を受けたため、大型免許を取得して運送業界に飛び込みました。30歳のときでした。その後、離婚を経て、ひとり親として子どもを育て上げました。
夜勤もこなし、フォークリフトの操作や燃料ガスボンベの交換もします。必死で働くなか、ハラスメントにも遭い、地域ユニオンの支援を受けます。その出会いをきっかけに、ユニオンの組合員から「詩を書いてみないか」と誘われたのが、詩を書くきっかけでした。
「詩の書き方」の本を探しに書店へ行っても見つからず、はじめは途方に暮れました。それでも「自由に書けばいいんだよ」と励まされ、詩作を続けてきました。
運転席から見える景色や、外に出せない感情を、使い古した伝票の裏に書きためる。それをもとに、一篇の詩を紡ぎ出します。
戸惑いながら書き始めた詩が、いつしか生駒さん自身を支えるものになりました。
60歳を機に、それまでの作品を一冊にまとめたのが、詩集『光る轍』(国鉄詩人連盟、私家版、2025)です。
そして2026年4月、『光る轍』が小熊秀雄賞を受賞しました。
同賞事務局のある北海道旭川市では受賞直後から話題となり、地元書店に納品した80部は約3カ月でほぼ完売。著者の手元の在庫もなくなりました。これほど人の心を打つ作品が埋もれるのは惜しい。そう考えた地元の出版社(小社)が支援金を募り、書店で流通する新版として刊行することになりました。
定年後も継続雇用社員として働き続ける生駒さん。今日も11トントラックの運転席から、どんな光景を見ているのでしょうか。
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