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【安積遊歩さん寄稿】女性の哀しみ—旧優生保護法、トリアージ、性暴力問題に通底するもの

 この日本社会は徹底的に男性が女性を支配するという構造下にある。これは国際的にも明らかで、日本の女性の地位は153カ国中121位(Grobal Gender Gap Report 2020)。そんな中で障害を持つ女性として生きていると、さらに差別が強大だ。

 障害を持っていない女性の地位が121位であるならば、障害を持っている女性の地位は無きに等しい。

 2月4日に出た優生保護法の国賠訴訟に対する札幌地裁の判決は、「障害を持つ女性の証言は全く価値のない、聞くに値しない」という、最低最悪の判決だった。原告夫妻のうち、夫が半年前に急逝したため尋問ができないことが理由だという。死人に口なしというわけだ。

 実際の被害者である女性の苦しみ、哀しみを完全に無視し、侮辱した判決である。その前に提訴した小島喜久夫さんに対しては、賠償金は認めなくても、少なくとも「違憲である」と言い切ったにも関わらず、だ。

 男たちは命よりも、それぞれの体よりも、大切なものがあると言われ続けて育つ。戦争の中では権威や名誉、そして女・子どもを守ることが自分の役割と信じ込まされる。そして戦争こそが、男の世界でもある。その戦争を持続するために医療が求められ、研究されつづけてきた。なぜなら兵士が傷を負ったときに、傷から回復するための医療だからだ。簡潔に言えば、敵を倒すことのできるからだに戻らせるために、戦争の中でトリアージ(いのちの選別)という価値観が生まれ、育ってきたという。

 トリアージは優生思想の極限の形であるにも関わらず、このコロナ禍の中で、それが正当であるかのように流布されてきている。

 そして性暴力。障害を持つ女性に対しては大っぴらにはふるってこない。もししてくるとしたら、逃げられない女性にコソコソと、おおっぴらにならないようにしてくる。

 障害を持つ女性たちは性的対象としての女ではない、つまりは人間ではない、という価値観を根付かせてきた家父長制。その呪縛はいまだ解かれていないから、優生保護法は1996年まであったし、今回の判決は、廃止されたはずのその法律を完全に踏襲するものだ。だからこの札幌判決は障害を持つ女性と一緒に家庭をつくった男性が、死んだことも幸いだったかのように、障害を持つ女性の痛みを完全に無視するという暴挙に出たのだ。見方を変えれば、障害のない女性たちは多くの男性によって、性的対象物としてしか見られていないということに、徹底的に気がついて欲しい。

 この札幌判決は、優生思想、そしてトリアージで助ける命と助けない命を分断していこうとする男社会の産物である。そしてまた無自覚にも、障害を持つ女性と持たない女性をさらに分断しようとする、極悪の判決である。

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